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千尋と両手に風紀3
「だったら、俺より平野を」
「お前の方が危なっかしいんだ。千尋」
高槻先輩が俺の言葉を遮った。
委員長が続けて言う。
「平野は大人しくしてるし、ちゃんと監視してるから問題ない。今のところはな。問題はお前だ。周りを見ずに突っ走る。夜、こそこそと平野に会いに行くわ、俺相手にも噛みつくわ、生徒会長をエレベーターに挟むわ」
委員長がまた笑った。
「だって、あれは………」
「お前は目立つ。自覚しろ。お前に突っ込みたがってる野郎がわんさかいるぞ」
「委員長!」
「俺が風紀にいるうちは、制裁なんて馬鹿な真似はさせない。だから、ちょっとは言うことを聞け。お姫様」
「姫って言うな」
………なんか、情けなくなった。
俺は男だし。
山田太郎の時は背も高かったし、そこそこ筋肉もあった。
男に襲われるなんて、考えたことも無かったのに。
確かに有栖川千尋は綺麗な顔をしている。
体格も華奢だ。でも、だからって………
黙り込んだ俺の頭を委員長がくしゃりと撫でた。
「まあ、深く考えるな。両手に華だと思って楽しめ」
「よく言うよ」
この日、俺は両手に風紀で登校したのだった。
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