88 / 306

千尋と「山田。タイキックー!」1

その日、俺は話題の人だった。 俺は知らなかったんだけど、今まで高槻先輩との登下校も注目の的だったらしい。 それが今度は風紀委員長も加わって、両手に風紀で登校したもんだから………。 「有栖川くん! いったい何があったの!? 委員長と一緒だったじゃない!」 いの一番に園田が食いついてきた。 「あ~………話すと長いから、昼休みでもいい?」 「うん」 園田がソワソワしているが、無視をする。他の奴らも興味津々だったが 「はいは~い。野次馬してるって高槻先輩と御影委員長にチクっちゃうよ~! バレたらお仕置きだよ~」 と、美村の言葉で、ササっと目線を外した。 「美村。ありがとな」 「いいよぉ。でも、後で教えてね」 美村がニッコリ笑って言った。 昼休み。俺と美村と園田は、弁当を買って裏庭の人の少ない場所で昼飯にした。 食堂なんかに行ったら、また注目の的になっちまう。 俺はロコモコ丼を食べながら、両手に風紀のいきさつを話した。 「有栖川くん………委員長にも気に入られちゃったんだね」 園田が感心したように言った。 「ええ!? どこがだよ」 「あの風紀委員長って、ここまでしないよ。高槻先輩がついているなら尚更」 “あの”って? 「なぁ。風紀委員長ってどんな人なの?イマイチ、キャラが分からないんだけど。ドーベルマンみたいってこと以外」 「ド………あ~、噂ね。あくまで噂なんだけど。有栖川くん、ヒカないでね」 「限りなく黒に近いグレーって感じ? まぁ、俺はホントだと思うよぉ」 「?」 「御影委員長って、中学生の頃、相当悪くて………族潰しだったらしいよ」 「族?」 「暴走族」 「ええ!? ヒクわ────!!」

ともだちにシェアしよう!