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千尋とナウシカ兄さんと高槻先輩2
気付けば、ナウシカ兄さんは俺をジーッと見てた。
なんだろ?
俺は、あっと腕時計を見る。そろそろ行かなきゃ。高槻先輩が起きちゃう。
俺はぺこりとお辞儀して、行こうとして腕を掴まれた。
「?」
「………名前」
俺の名前?
「有栖川です」
「………」
あっ、下もか。
「千尋です。有栖川千尋」
ナウシカ兄さんは俺をまだ見てる。
「俺、そろそろ行かなきゃ」
掴んでいた腕が、そっと離れた。
「ありがとうね」
リスに癒されたお礼を言って、歩き出した。
ナウシカ兄さんは、まだ何か言いたげだったけど、ほんとに急がなきゃ。
俺は足早に寮に向かった。
エントランスを抜けて、急いで部屋へ戻る。
そっとドアを開けて部屋へ入る。よかった。セーフだ。
ホッとしたのも束の間………
ゴパァーっとトイレの水の流れる音がして、高槻先輩が出てきた。
「千尋?」
「お、おはようございます。高槻先輩」
寝起きだよな。バレてないバレてない。
高槻先輩が眉を顰めた。
「その格好はなんだ? どこへ行っていた?」
ダメだこりゃ。バレた!
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