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千尋とナウシカ兄さんと高槻先輩3
「えっと。ちょっとウォーキングに………」
「一人でか?」
高槻先輩の顔が険しい表情になる。
「朝だし、大丈夫ですよ」
「千尋」
高槻先輩が低い声で呼んだ。思わずビクッとしてしまう。
なにビビってんだ。相手は高校生だぞ。
「体力つけたいし、ちょっとずつ体鍛えたいんで」
「鍛える必要なんかないだろう」
「でも……」
「俺が守ってやる」
これ、女子だったら「きゃー素敵! 抱いて!」なんだろうけど、俺は男だ。
守ってもらう必要なんかない。
「………それが、やなんですよ」
「何?」
「両手に風紀でご登校とか。俺は男なんですよ。守ってもらう必要なんかないです」
高槻先輩が俺の両手首を掴んで引き寄せた。
「あっ」
「千尋。委員長からも制裁の話は聞いただろう。一人で行動するんじゃない」
「だから、気にしすぎですってば」
高槻先輩の手を離そうともがくが、ビクともしない。
「離してください」
「振りほどいてみろ」
「えっ?」
高槻先輩が今まで見たことないような、強い視線で俺を見ていた。
「ほら。俺はたいして力を入れていないぞ。自分で振りほどいてみろ」
「………!」
俺は必死で腕を引いてみたが、ビクともしない。
「んっ!……も、いい加減に……あ!」
壁に押し付けられ、両手首を引き上げられた。
「こうされたら逃げられないだろうが」
「高槻先輩!」
壁と高槻先輩にサンドイッチされて、両手首を押さえつけられて、俺は身動きが取れなくなった。
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