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御影と瀧山5[side 瀧山]
[side 瀧山]
へぇ。あの御影が珍しい。
少年を庇うように立ち、本気で僕を牽制しているようだ。
御影はいつでもどこか人をおちょくったような態度だが、今は真顔で少年を守るように僕を睨んでいた。
ますます少年に興味が湧いた。
『品のある優等生でちょっとだけ腹黒いがそれも魅力的』
そんな僕の完璧な仮面の裏の顔を見抜いているのは、この御影と桜真くらいだ。
桜真の言葉をふと思い出す。
『抑圧は歪みを生む』
『どうゆう意味?』
『完璧に演じているつもりでも、いつか破綻してしまうよ。質の良い桐箪笥はね、気密に作られていて、上段の引出しを入れると下段の引出しが少し開くんだ』
桜真は薄く笑って言った。
『そんなふうに逃げ道が必要だと思うよ。ほんの少しだけ………気持ちの良いコトを、残酷なコトをするといいんだよ』
桜真の言葉は毒だ。
彼は人を操るのに長けている。だが分かった上で僕は乗った。
彼は僕と同じ部類の人間だ。
一緒にいると心地がいい。本性を隠す必要が無いから。
桜真が学園を離れている間、僕は苛立ち、退屈だったが………
目の前のこの美しい少年は最初から嫌悪感たっぷりの表情で僕を見ていた。
面白い。
「また会おう。ジャジャ馬君」
そう囁いて、その場を立ち去った。
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