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胸の傷とエロス4

「千尋。知っているのか?」 「えっと、ナウシカ兄さんです」 「ナウシカ?」 俺は朝のウォーキングでの出来事を話した。 「マジか。お前、生徒会ホイホイだな」 「やめてくださいよ!」 「まぁ、書記は害は無いだろう。どっちかつうとコミュ障のケがある」 「コミュ障?」 そうかな? 優しい感じだったけど。 「………千尋。お前、まだ俺に言っていない事はないか?」 「えっ?」 高槻先輩が俺をガン見してる。 「高槻。顔怖いから」 委員長がフォローしてくれた。ドーベルマンみたいだけど、委員長は意外と癒し要員だ。 「えっと、実は………」 俺は初日に保健室で寝込みを襲われた話をした。 「千尋! どうしてもっと早く言わないんだ!?」 「だって、男にキスされたとか、情けなくて言えないでしょ」 「まぁまぁ、高槻。で、その金髪は瀧山なのか?」 「分からないです。ハッキリと顔見た訳じゃないし」 「………」 委員長が少し考え込むようにして 「とりあえず、生徒会連中には近付くな。一人行動はするな。桜ノ宮には関わるな。復唱しろ」 「生徒会には近付きません。一人で行動しません。桜ノ宮には関わりません」 「いい子だ」 ヨシヨシと頭を撫でられた。 「でも、平野は………」 「平野の事も風紀に任せろ。復唱しろ」 「………風紀にお任せします」 またヨシヨシと撫でられた。 平野とはメールのやり取りを続けてる。委員長のことを教えたら、すごく安心してた。 今は桜ノ宮もいないし、落ち着いてるみたいだ。 「あ。先生に平野のイジメや桜ノ宮のこと話したら………」 「無駄だ」 「なんで?」 「ランク上位の生徒の親は雲の上の権力者だ。その子供もな。教師なんか一瞬で飛ばせる。口封じも簡単だ」 そんなこと………。 「なんでこんな山奥に金持ち坊ちゃんの全寮制学園があるか分かるか? マスコミも遮断できるし、何をやらかしても揉み消しやすいからだ。金持ちの問題児を放り込む場所でもある」 「なにそれ………」 「悪い事ばかりじゃないぞ。外部の誘惑が無いから勉強したい奴には持ってこいの環境だし。親の会社の跡を継ぐ奴からしたら、人脈作りに最適だ。セレブやら後継者やら、うじゃうじゃいるしな」 俺は黙り込んだ。世界が違いすぎる。 山田時代のアホな高校生活が懐かしい。 「だから、風紀が頑張ってんだ。そんな不安そうな顔するな」 ガハハと委員長が笑った。 やっぱ頼もしいわ。委員長。

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