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千尋とナウシカ兄さんと絆創膏3
ナウシカ兄さんは、林の小道にあるベンチに俺を座らせた。
ガサガサとコンビニ袋から甘い紅茶とブラックコーヒーのペットボトルを出して、両方差し出す。
どっちか選べってことか。
俺は甘い紅茶を取った。カシッと開けて、一口飲む。
ナウシカ兄さんも隣に座ってコーヒーを飲んだ。
すごい静かだ。
ナウシカ兄さんは何にも聞いてこない。
これが美村や高槻先輩や委員長だったら「千尋!姫!アリスちゃん!どうしたッ!?」って、怒涛の質問責めになっただろうな。
正直、何も聞かないでいてくれるのはありがたい。
しばらく無言で紅茶を飲んで、ニ人でぼんやりしていた。
サワサワと初夏の風が緑の葉を揺らす。
時々、小鳥のさえずりが聞こえた。
ナウシカ兄さんは息をするのも静かだ。
「……ありがとう。落ち着いた」
俺はぽそっとお礼を言った。
「………静かな場所にいると落ち着く」
「………そうだね」
ナウシカ兄さんはコンビニ袋からまた何か出した。
絆創膏?
自分の首を指先でトンっと指して
「君、それ……隠した方がいいよ」
「?………あ!」
俺はバッと首を隠した。さっき、あの変態会計に首に吸い付かれた。
キスマークつけやがったのか!!
俺は情けないやら、恥ずかしいやらで、青くなったり赤くなったりした。
ナウシカ兄さんは黙々と絆創膏の箱を開けて一枚出した。
「右、向いて」
「………」
俺の左の首筋に絆創膏を貼った。
ああ。情けない。落ち込むわぁ。
ナウシカ兄さんは何も言わず、コンビニ袋から今度はチョコを出した。
スニッカーズの小さいやつだ。それとクマのグミの小袋も出して、俺の膝の上に乗せた。
俺はちょっとおかしくなって、思わず笑ってしまう。
「ナウシカ兄さん、他に何買ったの?」
「ナウシカ兄さん?」
いっけね。心の声が出た。
「ごめんなさい。名前知らなかったから。リスが肩に乗ってたの、ナウシカみたいで」
ナウシカ兄さんはどこかほっとしたように笑った。
相変わらず、綺麗な王子さまスマイルだった。
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