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高槻先輩とトム・ヤム・クン2
リビングでテレビのリモコンをポチポチしてたら、高槻先輩が帰ってきた。
息を切らしてコンビニ袋を差し出す。
「あの映画見たい。マッハじゃない方のムエタイ映画。トンチンカンみたいなの」
「ト………『トムヤムクン』か?」
「そう。DVD持ってきて」
「わ、分かった」
高槻先輩は慌てて自分の部屋からDVDを取ってきた。
「セットして」
「あ、ああ」
高槻先輩にDVDをセットさせて、俺はジンジャーエールを飲んだ。
戸惑ってる高槻先輩に、ソファをポンと叩いた。
「座ったら?」
高槻先輩がおずおずと隣に座った。
「高槻先輩、甘いのとピザポテトどっちが好きですか?」
「ピ、ピザポテトかな?」
俺はピザポテトの袋をバリっと開けて、高槻先輩に差し出す。
「ん」
「あ、ありがとう。千尋」
「買ってきたの高槻先輩だし」
俺が笑って言うと、高槻先輩もホッとしたように笑った。
「高槻先輩も今日はサボっちゃう?映画三昧しましょうよ」
俺はカントリーマアムを食べながら言った。
「………そうだな」
高槻先輩がピザポテトを食べながら答えた。
これ。俺と小林の仲直り方法だ。
小林は怒るってことをしない男だが、俺が一人でから周りしてケンカっぽくなるんだ。
カッとして、小林に対して意地悪なことを言ってしまった事もあった。
意地をはって無言になっちゃたり、謝ろうとしんみりしてしまったり、言い訳をしようと焦ったりすると小林が言う。
『山田。ビール買ってきて』
最初の頃は「なんだコイツ」って思ったけど、買いに出て歩いてるうちに頭が冷えてくる。
部屋に戻ったら小林は何事もなかったように、「ありがとう」とビールを受け取り、ニ人でお馬鹿映画を見た。
「ありえねぇよ、この展開」「CG嘘くせぇ」とか、あーだこーだ言って。
知らないうちに仲直りしてた。
槻先輩は何でキスしたのかとか、キスマークまでつけやがってとか、蒸し返したくなくて。(俺自身ちょっと気持ちよくなっちゃってたし。うおお!)
小林流仲直りを実践したのだ。
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