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千尋と駆け込み寺3
小林と合流して、一緒にスーパーで買い物した。今日の晩ご飯は小林が作る。
ついクセでビール買いそうになったけど、いかんいかん。俺は今、高校生だ。
「おじゃましま~す」
部屋に入って、勝手知ったる小林のベッドにダイブした。
オリンピック選手のアスリートが使ってんのと同じマットレスで、非常に寝心地がいいんだ。
「はぁ~」
わざとらしく大きなため息を吐いた。
小林は他人に干渉しない男なので、相談したい時や愚痴を聞いてほしい時は大げさにアピールするんだ。
「なに?」
「聞いてくれる?」
「いいよ」
小林は肘掛けに背を預けて、両脚を伸ばしてソファに座って俺を見た。
俺はベッドに大の字に寝転がって愚痴る。
「望応学園って男子校なんだけど、ホモの巣窟学園でさぁ」
「へぇ」
「今週はホモとの遭遇が多くてカルチャーショックだった。なんかチャラ男のホモに追っかけられたし」
「腐女子が喜びそうだ」
腐女子ってゆうのは、園田の女の子バージョンだ。園田は腐男子。
てゆうか、なんでそんなことまで知ってるんだ? 小林は。
「同じ職場の三好さんて女の子が腐女子なんだよ。よく俺に妄想話をしてくるんだ」
小林は多少のことでは、ひいたりしない。個人の趣味や服装、外見や地位では判断しない男だ。この三好さんって女子は面白い人間なんだろうな。
「………付き合ってんの?」
「付き合ってないよ」
俺はちょっとホッとした。
いや、小林に彼女ができるのは喜ばしいことだが、駆け込み寺を失うのがちょっと寂しくて。
小林は大学時代の彼女に「オタク臭い!」と、無断でフィギュアコレクションを捨てられてから、女の子に対して慎重になってる。あれから彼女作ってないと思う。
「それで、その首なの?」
「あ~。うん」
俺は起き上がって、ガーゼを取った。
「………」
これはさすがにヒクよなぁ。
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