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小林と山田2[side 小林]
[side 小林]
「有栖川?」
俺が風呂からあがると、有栖川はベッドのど真ん中で寝ていた。ベッドヘッドに置かれた漫画を手に取る。
手塚治虫のきりひと讃歌。
山田が読もうとして、毎回挫折して………結局、最後まで読めなかった漫画だ。
「………」
今日、俺は山田にしていたのと全く同じ態度で有栖川に接した。
有栖川は山田と全く同じ態度で応えた。
記憶転移なんてもんじゃない。
山田太郎そのものだ。
「………山田。俺のベッドだ。ソファで寝ろ」
有栖川が寝言混じりに答えた。
「………んー。お前はいっつもこのベッドで寝てんだろ。社蓄の俺に譲れよ………」
「………ッ!!」
俺は息を呑んで、
「山田?」
少し震える声で呼んだ。
「んー?」
ベッドの横に膝をついて、ぽふりと眠る有栖川の腹に頭を乗せた。
「………本当に山田なのか?」
小さく呟く。
「………なんだよぉ?」
むにゃむにゃと、有栖川がまた寝言混じりに言った。
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