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千尋とカルボナーラ2

次に目覚めたとき、小林はもう起きてた。 洗濯機の音がする。 俺はむくりと起きて、大きく伸びをした。 やっぱり体が軽いぜ。最高だ。このマットレス。 はっ! 今の有栖川の財力ならば、このマットレスも買え………いやいや。 有栖川父の金を当てにしちゃいかん。やっぱ、卒業して働いてから買おう。 「起きた?」 「うん。何時?」 「12時前。顔洗っておいで」 俺は洗面所で顔を洗った。 朝兼昼飯を小林が作る。 今日はサラダとスープとカルボナーラだって。 映らないテレビの横に、小林が借りてきたであろうレンタルショップの袋があった。 中を見たら新作映画のDVDだ。ちょっと見たかったやつだ。 でも勝手に見ると小林が不機嫌になるからな。小林はネタバレを非常に嫌う男だ。 昼飯食べながら、一緒に見よう。 俺と小林はソファに座ってカルボナーラを食べながら映画を見た。 サスペンス映画で、けっこう面白かった。 映画が終わって、小林がコーヒーを入れにキッチンへ立った。伸びた前髪をいじりながら、俺はカップを手に戻ってきた小林に言った。 「小林。髪切ってくんない?」 「ん?」 有栖川父が泣くので髪を短く切れなかったが、奴は今海外だ。 「ほら。長いと女っぽいじゃんか。ばっさり切ってくんねぇ?」 「ああ。昨日の、気にしてるの?」 「どーせ、俺は華奢で背も低いですよ。男子校で女の代わりに見られてますよ」 「今から成長期なだけだよ」 小林はコーヒーをローテーブルに置いて、 「これ飲んでからね」 と言った。

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