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ナウシカ兄さんと早朝散歩3[side 南方]
[side 南方]
昨夜、千尋からメールが届いて、一緒に早朝散歩することになった。
「ナウシ………蓮」
千尋はナウシカ兄さんって呼びかけてやめた。俺はつい笑ってしまう。
そんなあだ名を付けられたのは初めてだ。
「ナウシカ兄さんでいいよ」と言ったけど、千尋は口の中で「蓮。蓮」と名前を呼ぶ練習をしてる。
素直で可愛い。この学園にこんな素直な子はいない。
いつもの木の下に座って、二人でぼんやりしめいると、千尋がうたた寝をはじめた。
気持ちよさそうに眠ってる。俺はそっと千尋の頭を膝の上に乗せた。
俺は寝付きも悪いし、眠りが浅い。
本当に眠れなくなってしまった時には睡眠薬に頼ることもあった。
でも千尋の寝顔を見ていたら、俺もつられてウトウトとうたた寝をしていた。
「………ん」
カサカサと音がして目を開ければ、いつものリスが降りてきて千尋のお腹の上に座っていた。
「ちひろ」
静かに千尋を起こす。
「………ぁ」
千尋がリスを見て、嬉しそうに笑った。リスに癒されてるみたいだ。
そんな千尋を見て、俺はすごく癒されてる。
クッキーを食べたあと、リスが千尋の鼻にちょんとキスをして木に登っていった。
リスを見てた千尋は、ちょっと寄り目になってて、その顔が可愛いかった。
もう少し一緒にいたくて、千尋の髪を撫でた。このまま、もう一度眠ってくれないかな。
短くなった黒髪は、少年らしくて無邪気な千尋に似合っていた。
でも………穏やかな時間にも終わりが来る。
千尋は起き上がった。離れてしまった温もりに、少し寂しく感じた。
「また散歩しようね」
それに気付いたのか、千尋が俺に微笑みかけた。
この子は約束を守る。そう感じる。
「うん」
俺も笑って答えた。
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