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千尋と嵐の前の静けさ1
早朝散歩は高槻先輩にバレる事なく、俺達はいつも通り登校した。
ブレザーのポケットが破れちゃったので、ちょうどいいきっかけにして今日から夏服だ。
と言っても、半袖シャツに紺のカーディガンを羽織ってる。避暑地的な場所なので、まだ暑くないし心地いいんだよね。
だから、まだブレザー着てる奴もいれば、半袖の奴、カーディガンの奴もいてバラバラだ。
教室に入ったら、皆に可愛い可愛い言われて複雑な気分だ。
「アリスちゃん。髪短いのも似合うねぇ。すっごい可愛いよぉ」
「完璧な美少年だ………萌える!」
「お前ら………」
美村と園田にそう言われて、ますます複雑だ。
おかしいなぁ。髪短くしたら、女の子っぽさ無くなるはずなのに。
こんなに可愛い言われるとは、非常に不本意です。
お昼休み。
いつものベンチで三人でランチだ。今日はオーガニック系の弁当屋のケータリングが来てた。
俺はヒジキと豆腐のハンバーグ弁当。
美村は三元豚の生姜焼き弁当。
園田は鶏肉団子の黒酢餡かけ弁当。
ちなみに米は発芽玄米だ。体に良さそう。おかずもほうれん草のキッシュとか、煮豆とか。容器は可愛い感じで、女子が好きそう。
デザートに豆乳プリンとゴマ団子も買った。
「なぁ。俺、髪短くしたらホモに追いかけられること無くなるって思ってたんだけど。ひょっとして逆効果なの?」
思い切って聞いてみた。
「あ~。うん。そうだね」
「アリスちゃん。誤解してるようだけど、みんながみんな本気のホモって訳じゃないよぉ?」
美村が言った。
「エスカレーター式の男子校でしょぉ。望応学園は独特というか、金持ちで美形が多いのよ。自然と男同志のカップルも増えちゃうし。それが変って思う子も少ないの。性別関係無いって感じ?」
「ええ?」
「有栖川くんはホモに狙われてるって訳じゃないと思うよ。本気のホモに崇められてるのは、ほら! 御影先輩とか」
「委員長が!?」
園田はコクコク頷く。
「御影先輩は望応学園いちの兄貴だよ!野球部とか柔道部とか。御影先輩を兄貴と慕うごっつい系のファン多いんだから」
「あ~。『兄貴にならケツ掘られてもイイっす!』ってね。ま、御影先輩は相手にしてないけど」
俺はちょっとだけ委員長を不憫に思った。
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