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千尋と黒い稲妻1

放課後、俺は高槻先輩に送られて寮に帰った。高槻先輩はまた風紀室に戻っていった。 忙しいならいいのにって思ったんだけど、髪切って可愛いくなっちゃったから気をつけなさい、みたいなことを言われた。 非常に不本意です。 俺は部屋でゴロゴロしながら、手帳から出した写真を眺めた。 大学時代の飲み会の時の写真だ。 手前に仏頂面の小林。その後ろにビール片手にめっちゃ笑ってる俺だ。 「命の恩人の写真がほしい」みたいなテキトー言って、小林に頼んで貰ったんだ。 「………」 毎朝、鏡に映るのは「有栖川千尋」の顔だ。 このままじゃ、山田太郎の顔を忘れちまいそう。 なんか、忘れちゃいけない気がして。 この写真を貰った。 俺は写真を手帳に戻して、部屋を出た。 キッチンのお菓子入れを見る。 買ってきたお菓子はここに入れて、高槻先輩にも食べていいよって言ってる。(高槻先輩が買ってきたやつもね) 「ありゃ。なにも無い」 高槻先輩、じゃがりこ食べたのか。 俺はコンビニにお菓子のストックを買いに行くことにした。

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