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千尋とエプロン1
放課後。
委員長に送ってもらいがてら、俺はコンビニで食材を買い込んでいた。
コンビニ店員が「あっ、昨日の!」みたいなコショコショ話してるけど、スルーだ。
園田が言うオールスター祭なんてやらかして、新聞なんか載っちゃって、スルースキルを高めないとやってらんないぜ。
キスは男同士だから、ノーカンだ。
俺の唇は、いつかできるであろう可愛い彼女をファーストキスとしか認めんからな。
「姫、料理できるのか」
「まぁ、ぼちぼち」
山田太郎時代、ギャル系の彼女に貢いでいた俺は節約の為に自炊して弁当男子だった。
小林ほどじゃないけど、男の一人暮らし料理はできる。
「高槻先輩に何も食べさせないで帰らせてくださいよ」
レジで会計しながら、俺は委員長に頼んだ。
「任せとけ。いいなぁ。高槻は。可愛い嫁がいて」
「嫁言うな」
「今度、俺にも食わせろよ」
「別にいいですけど。たいしたもの作れませんよ?」
「俺の為に作ってるってのがいいんだろうが。ぜひ、裸エプロンで頼む」
「アホですか」
「アホ言うな。男のロマンだ」
委員長とウダウダ喋りながら寮に戻った。
新聞の事とか、キスの事とか………委員長が高槻先輩を上手くなだめとくって言ってた。
また委員長に張り合って、キスでもされたら最悪だ。
どうも高槻先輩は委員長に張り合って、真似っこする傾向があるんだよなぁって言ったら「そうじゃねぇよ。姫もたいがい鈍いなぁ」と、ため息をつかれた。
どうゆう意味だろ?
それはさておき、めっちゃ久々の自炊だ。俺はスマホでレシピを検索する。作り方はだいたい覚えてるけど、念の為にね。
「………」
ついでにメールのチェックをした。
ナウシカ兄さんに何度かメールしたけど返信が無い。
昨日の傷付いたような顔が忘れられなかった。
『明日の朝、いつものとこで待ってる』
もう一度メールをして、レシピの画面に戻した。
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