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千尋と保健室と稲妻会長1

翌朝、高槻先輩が寝てるうちに抜け出して、いつもの木の下に行ってみたけど……… ナウシカ兄さんは来なかった。 ついでにリスも来なかった。 俺はナウシカ兄さんのメルアドしか知らない。もうちょっと色々話しとけばよかった。 「………」 俺はため息を吐いて、とぼとぼと寮に戻った。 今朝は委員長が「いいなぁ。嫁欲しい」とうるさかった。 裸エプロンの話題は高槻先輩が鬼の形相で阻止していた。 高槻先輩、裸エプロン嫌いなのかな? 今日は曇りだ。そのせいか、ちょっと憂鬱な気持ちになる。 そしてお昼休み。 今日はカレー屋のケータリングが来てた。けっこう辛いやつ。でもハバネロみたいにやみつきになる味だ。 美村はカレーはパス。俺はあんまり食欲わかなくて、二人で購買でパンを買った。 園田だけ激辛カレーを選んだんだけど、 「うぅ」 「大丈夫か? 園田」 半分食べたところで、園田は脂汗をかいて呻きだした。スパイスが効きすぎて、お腹痛くなっちゃったみたいだ。 「園ちゃん。トイレ行く?」 美村が手を貸して、立ち上がらせた。 「俺、保健室で胃薬もらってくる。美村は園田についててやって」 「あっ! アリスちゃん」 ここから保健室は遠いし、俺が薬もらってきた方が早いと思って俺は走り出した。 保健室の前で少し荒くなった息を整えてから、ドアに手をかけた。ほんと軟弱な体だぜ。 「伊丹先生? 有栖川です~。胃薬欲しいんだけど」 しーん。 「ありゃ。いない」 いっつも保健室にいないんだよな。 「流浪の保険医はどこ行ってんだ。勝手に胃薬もらっちゃうよ」 俺は薬箱を探した。 「薬箱~胃薬ぃ~激辛カレ~園田ぁ~腹痛~♪」 ちょっと音程外れてるけど、鼻歌まじりで胃薬を探した。 そんなマヌケなことしてたもんだから、背後のベッドにいた人の気配に気付かなかった。

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