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千尋と保健室と稲妻会長2
腕を掴まれて、ぐいっと後ろに引っ張られた。
「うわぁッ!?」
よろけた体を厚い胸板に受けとめられた。後ろからぎゅっと抱きしめられる。
不意を突かれて心臓が止まるかと思った。
「よお。音痴の眠り姫」
「うげっ! 生徒会長!!」
俺は生徒会長の腕の中だ。なんでまたコイツと遭遇すんだよ!?
「離せッ! このセクハラ野郎!」
「あぁ? お前、顔のわりに口悪いな」
「うるさ………も、離せってば!!」
悲しいかな、圧倒的な体格さだ。
全力で暴れてるのに、逞しい腕はビクともしない。
「この性犯罪者っ!!」
「はぁ!?」
「コンビニでベロチューかましやがって! 頭おかしいんじゃねぇのか!」
俺は首をねじって生徒会長を睨みつける。
「あれはお前が下手な嘘つくからだろうが。ちょっとしたイヤガラセだ」
「はぁ? 意味わかんな………わっ!」
生徒会長の腕の中で、くるんっと向きを変えられた。真正面から腰を抱かれた体勢になる。
「やっとご対面だ」
俺の顔を見て、ニヤっと悪い顔で笑った。悔しいが、そんな顔もワイルドでイケメンだ。
「俺は会いたくなかった」
「そうかよ。ムカつくな。お前」
目を細めた生徒会長が声のトーンを落としたので、ドキッとした。
やばっ。また余計なこと言っちゃったかも。
「俺っ、あんたの相手してる暇ないから! 友達が腹痛でヤバイから胃薬貰いに来ただけだし!」
俺は抱っこを嫌がる猫みたいに、両手を突っ張って、どうにか逃げようともがく。
すると、生徒会長の腕の力が緩んだ。
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