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桜ノ宮桜真と水曜日の夜1[side 瀧山]
[side 瀧山]
水曜日の夜、桜真が僕の部屋を訪ねてきた。木曜に戻ると聞いていたけど、早まったらしい。
「随分、学園を離れていたね」
リビングのソファに座る桜真に温かい紅茶を出した。
「退屈はしてないんじゃない?」
桜真がぱさりと校内新聞をローテーブルに乗せた。例の風紀VS生徒会の号外だ。僕は不快に眉を顰める。
「楽しそうじゃないか」
桜真は唇に微笑を浮かべて言った。
「これが噂の眠り姫ね………」
「とんだジャジャ馬だ。この僕を金髪変態男と呼んでる」
「アハハ! それはいいね」
桜真は声に出して笑った。そして、猛禽類のように瞳を細めて、眠り姫の写真を見つめた。
「面白い駒になりそうだね」
僕は片眉をくいと上げて言った。
「僕が調教する。手を出さないでくれるかな」
「ああ。君の好みっぽいね。綺麗で生意気なの」
桜真は紅茶を一口だけ飲み、「さてと」と、立ち上がって黒いボサボサのウィッグを手にした。
「よくそんな格好ができるね。僕なら耐えられない」
「そう? 面白いよ。外見だけで態度が変わる馬鹿をからかうのは」
ウィッグを被り、分厚いメガネをかけて桜真が笑った。
「コミュ障の王子サマのところに行かなきゃ。彼も眠り姫に夢中みたいだね」
「西大路もね。コンビニで眠り姫にキスしたらしいし」
桜真は笑みを引っ込めて
「眠り姫を調教するならさっさとして。でなきゃ僕が貰う」
くるりと踵を返し、部屋を出て行った。
「………」
桜真も僕も人を操るのが好きだ。歪んでる。僕は桜真の残酷さも、歪みも理解できた。
けれど、桜真の西大路に対する感情だけは、未だに理解ができなかった。
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