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西京極と隊長たち1[side 西京極]
[side 西京極]
放課後の空き教室。
生徒会の各親衛隊の隊長で昼間の事を話し合う事になった。
「どうして1-Bの眠り姫が平凡くんを連れてったのかなぁ?」と、会計の親衛隊長・堀江光流 が言った。
「………先日のコンビニ騒動、西大路様と眠り姫がキスしたって聞いてるし。西大路様の側をうろつく平野が邪魔だったとか?」と、生徒会長の親衛隊長・西院雪路 が言った。
「西大路様のいつもの悪ふざけでしょう。噂でしか知らないけど、有栖川君がそんな事を考えるとは思えない。」と、書記の親衛隊長・西中島優弥 が静かに言う。
「西京極君はどう思うの?」
堀江が聞いてきた。
「僕は平野が眠り姫を利用して、生徒会や風紀に取り入ろうとしてるんだと思う」
「あの平野がそんなに頭使えるかなぁ。偶然じゃないの?」
西院が他人事のように言ったので、イラつきながら答えた。
「君らはいいさ。他人事だろうけど、平野は瀧山様につきまとっているんだ。桜ノ宮と同室だから、瀧山様も無下にできずにいる」
「はぁん………僕からしたら、桜ノ宮の方がムカつくよ。あいつが来てから難波様の色遊びが悪化した」
栗色のゆるくウェーブのかかった髪を指先で弄りながら、堀江が不愉快そうに言った。こいつは会計のセフレのひとりでもある。
少女のような可憐な顔立ちだが、堀江は女のように嫉妬深く意地が悪い。
会計が一年生を食い散らかしているなら、堀江の相手をする時間が減っていて機嫌が悪いんだろう。
「君がしっかり手綱を掴んでないから。難波様が生徒会の仕事をサボって西大路様の負担が増えたんだぞ」
西院が嫌味を言う。
西院はクセのない長めの黒髪で、日本人形のような整った顔をしている。こいつは嫌味ばかり言う。
本当は瀧山様も生徒会の仕事をしていないが、僕や親衛隊の上位メンバーで上手く誤魔化している。瀧山様の不利になるような事には絶対にさせない。
「負担? 生徒会室にセフレ連れ込んで楽しんでるんじゃないの?」
「………場所を選ばず、あっちこっちで盛るよりは品があるだろ?」
「ケンカ売ってんのぉ」
会長と会計の二人はもともと気が合わない。自ずと親衛隊同士も仲が悪くなった。
「二人とも落ち着いて。別にいいじゃないか。今回のことは特に気にしなくても。有栖川君は風紀の高槻君と同室だ。おかしな子じゃないよ」
そう言う西中島は良い子ちゃんだ。
背が高く、手足の長いモデルのようにスラリとした美形だ。
西中島自身が親衛隊に崇められていてもおかしくない容姿をしているが、一途に書記に尽くしていた。
でも、その優等生面が僕は嫌いだった。
「君には何もかも他人事だね。書記様は生徒会のお仕事をボイコットしてもお咎めなしだものね」
僕も嫌味を言ってやる。
「………蓮太郎様は繊細なお方だ。会長様には迷惑をかけて申し訳ないと思うが、無理はされない方がいい。ゆっくり戻ってきてくだされば………。それに今日は久しぶりに食堂に顔を出された。それが桜ノ宮君のおかげだとしても」
桜ノ宮の名前に、ピリッと空気が張り詰めた。
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