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高槻先輩と嫁3
翌朝、俺はちょっと早起きして、キッチンに立った。
昨夜、メインのおかずは作っといたし、簡単なおかずをちゃちゃっと作ってタッパーに詰める。
高槻先輩が手伝おうかって聞いてきたので、「じゃあ、おにぎりお願いします」って頼んだけど………。
「あちっ!」
高槻先輩は炊きたてご飯に悪戦苦闘していた。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だっ!」
ぎこちない手つきで、握ったおにぎりはというと………ナンダコレ? 幼稚園児の作品かよって感じだ。
「高槻先輩、やっぱりいいです。コーヒーでも入れてください」
思わず笑って言ったら、高槻先輩がしょんぼりした顔になった。
ああ、もう。しょうがないなぁ、この残念イケメンめ。
「ホラ。あーんして」
俺はおかずの卵焼きをひとつ、高槻先輩に差し出した。
「ち、千尋」
「ん」
高槻先輩がおずおずと口を開けた。
猫舌だったっけ? もう熱くないのになぁ。
俺は高槻先輩の口に卵焼きを放り込む。麺つゆと万能ネギ入りの卵焼きだ。
「どうですか?」
「美味しいよ」
「よかった」
俺はニカっと笑って、残りのおにぎりを握る。このぶちゃいくな高槻おにぎりはさすがに弁当に入れられない。後で俺が食べておこう。
高槻先輩が俺の肩越しにじっと見ていた。近いなぁ。ちょっと邪魔だ。
「高槻先輩。ほら、トーストとコーヒーセットして」
「あ、ああ。」
ようやく離れてった。おにぎり握ってるの見て楽しいのかな?
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