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高槻先輩と嫁4

おにぎりも全部詰め終えて、ひと息ついた。 高槻先輩がセットしてた朝食のトーストも丁度いいタイミングで焼きあがった。 お皿にトーストをのせた高槻先輩が振り返って、ぎょっとした声を出した。 「千尋!」 「ふぁい?」 俺は高槻先輩のぶちゃいくなおにぎりを食べてたとこだ。 「そんなの食べなくていいから」 高槻先輩はダイニングテーブルにお皿を置いて、慌てて俺の手首を掴んだ。 けど、もう食べちゃったよ。 「美味しいですよ?」 俺は高槻先輩に手首を掴まれたまま、指に付いた米粒を舐めた。 「っ!」 米粒も無駄にしちゃいけないからね。俺はちゅっと指を舐めて、きれいに食べた。 「ごちそうさま。高槻先輩」 そう言って笑ったら、掴まれたままの手首をぎゅっと強く握られた。 「んっ、なに?」 強い強い。力強い。何なんだよ。自分で食べたかったのかな? 「………千尋」 部屋のチャイムが鳴った。 「あ。委員長かも」 高槻先輩はハッとした顔をして、玄関に向かった。なんだったんだ。 「おお。いい匂いがしてるじゃねぇか」 「おはよう。委員長。今朝は早いですね」 「弁当が楽しみでな」 小学校の遠足かよ。委員長はタッパーのフタをぱかっと開けて、唐揚げをひょいっと摘んでつまみ食いした。 「あ! コラ」 「美味いじゃないか。いい嫁になれるぞ」と、俺の頭を撫で回した。 「ちょ、やめろってば!」 「委員長! 大人しく座ってください」 「西宮みたいに言うなよ。高槻、俺もパン焼いてくれ」 「………分かりました」 今朝は三人で賑やかな朝食になったのだった。

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