222 / 306
千尋とシャイニングウィザード5[side 平野]
「ん────ッ!!」
必死で抵抗してるのに、非力な僕は上級生にずるずる引きずられてしまう。
手入れのされていない鬱蒼とした木々の下、草むらに押し倒された。
上級生の荒い息が首筋にかかる。
「こうゆうの好きなんだってね。エッチな子だね」
「んっ! んんぅ!!」
大きな生温かい手がシャツの中に入ってきた。
嫌だッ!! 誰かッ!
「何やってんだ!! この変態ッッ!!」
「うわっ!?」
ガツッと音がして、僕にのしかかってた上級生が横にゴロンと転がった。
「平野! 大丈夫か!?」
飛び蹴りして上級生を退かせたのは、息を切らした有栖川くんだった。
「あ、有栖川くん!」
僕はホッとして有栖川くんの手を取った。立ち上がろうとして、大きな手で足首を掴まれた。
「ひっ!?」
「離せ! 変態!!」
「ぎゃっ!」
有栖川くんが上級生の顔をガツガツ蹴った。僕は上級生の手を振り払って、有栖川くんの後ろに逃げた。
「平野! お前、走って風紀の誰か呼んでこい」
ハッとして見ると上級生は僕の代わりに有栖川くんの足首を掴んでいた。
「でもっ」
「早く!」
ビクッとして、僕は全力で走り出した。僕じゃあの上級生を止められない。誰か助けを呼ばなきゃ!
「ハァッ………ハァッ………だれかっ!」
心臓が壊れるんじゃないかってくらい、裏庭を全力疾走した。
早く! 早く誰か!!
「平野。どうした?」
委員長と高槻先輩!
「おお、コロッケ買ってきたぞ。お前も食………!?」
僕のただならぬ様子に2人が気付いた。
「た、たすけて………あ、有栖川くんが!」
「千尋はどこだ!?」
ともだちにシェアしよう!