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千尋と平野と高槻先輩1

俺と高槻先輩が風紀室に着いた時、平野は青い顔でうずくまるようにしてソファに座っていた。 西宮副委員長と中津先輩が心配げに宥めている。 「あっ! 有栖川くん!!」 俺に気付いた平野がソファから飛び上がるように立ち上がって、俺の側に駆け寄った。 「大丈夫!? 何もされてない!?」 「おう。返り討ちにしてやったぜ」 泣きそうな顔の園田にニカッと笑って答えた。 平野の目から、ボロボロと大粒の涙が溢れた。 「ごっ、ごめんね。僕、逃げちゃって…」 「いやいや。平野は逃げてないだろ。委員長達を呼んでくれたじゃん」 でも、平野の涙は止まらなかった。 「………っ………ごめ………なさい………ひっく」 ああ、もう。 俺は平野のほっぺたをつまんでビローンと横に伸ばした。 「あ、ありゅしゅがわふん?」 「平野も無事。俺も無事。変態は委員長が放り投げた。問題ない! いいな?」 「………ふぁい」 平野、ほっぺた柔らかいな。 意外とよく伸びるよ。ほっぺた。 ハムスターみたいだ。 俺はちょっと面白くなって、平野のほっぺをみょんみょん伸ばしてたら「有栖川、そろそろ離そうか?」と、西宮副委員長にそっと止められた。 いかんいかん。俺は平野のほっぺたから手を離した。 ガチャリとドアが開いて、変態を反省部屋に放り込んできた委員長が戻ってきた。 「で、何があったんだ?」 「あ………あの、僕………」 いきなり事情聴取かよ。 まだ平野は小さく震えてる。落ち着かせてあげないと。 「委員長。昼飯の後じゃ駄目?」 お腹空いたし、平野の顔はまだ青いし。何か食べて落ち着いた方がいい。 「お前なぁ」 呆れ声の委員長に 「今日、委員長のリクエストの肉じゃが作ってきたし」 「よし! 飯にしよう」 高槻先輩がジト目で委員長を見ていたが、構わず昼飯タイムになった。

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