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千尋と平野と高槻先輩4
平野がお泊まりセットを取ってくる間、俺と高槻先輩は一階のエントランスで待っていた。
「千尋。今回は未遂で済んだが、今度からは無茶はするな」
おっと、1仏陀のお説教再開だ。
「大丈夫ですって」
「千尋」
高槻先輩に両肩を掴まれた。
「心配なんだ。必ず俺か風紀の誰かを呼ぶと約束してくれ。お前に何かあったら………俺は耐えられない」
静かな声で言われ、真摯な眼差しで見つめられる。
「高槻先輩………」
高槻先輩が両手で俺の頬をそっと包んだ。
「無茶はしないと約束してくれ」
………本気で心配かけちゃったんだ。
シャイニングウィザードが綺麗に決まって、ちょっと調子にのっていた俺は反省した。
「はい。ごめんなさい。高槻先輩」
「千尋」
「………あの~」
お泊まりセットを取ってきた平野が気まずそうに声をかけてきたので、高槻先輩が俺の頬から、そっと手を離した。
「行こうか」
「はい」
平野を連れて、俺の部屋のある寮まで歩いた。
俺達を部屋まで送ってから、高槻先輩は学校へ戻っていった。
俺と平野は部屋着に着替えて、リビングで映画でも見てウダウダする事にした。
「あの、さっきは邪魔しちゃってごめんね」
平野が申し訳なさそうに言った。
「なにが?」
「えっと、有栖川くんと高槻先輩って、付き合ってるの?」
「はぁあ!?」
なんでそうなる!? 平野よ。お前も園田なのか!?
「付き合ってなんかないって! 俺、ホモじゃねぇし!」
「そうなの?」
「俺はギャルが好きだし」
ホスト教師といい、平野といい、俺と高槻先輩はおホモだちに見えるのか?
「平野はどんな女の子がタイプ?」
「えっと、やっぱり優しい子かなぁ」
「あ~、分かる。好きそう」
「そう? 有栖川くんがギャル好きって意外だよ」
「そうか? ちょっとワガママなギャルって可愛いじゃん。ヒョウ柄の下着とか、めっちゃ可愛い」
「………」
平野は苦笑いだ。
いいんだ。この反応には山田時代から慣れてる。
まぁ、平野もリラックスしてきたみたいで良かった。
そんなこんなで俺と平野は、ウダウダと午後を過ごした。
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