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千尋と1仏陀と1ベッドの夜4
「ん………」
千尋が寝返りをうって、こっちを向いた。すやすやと心地よい寝息をたてている。
見慣れた顔だが、やっぱり千尋は綺麗だった。
綺麗なだけじゃない。目覚めて笑えば、その場が明るくなる。
委員長も風紀のみんなも千尋を気に入ってる。生徒会の南方もだろう。
南方を庇った千尋を思い出して、俺は眉根を寄せた。まるで俺は悪役だったな。
「ん~」
むにゃむにゃ言いながら、千尋がふと目を開いた。やましい事など無いが不覚にもどきりとしてしまう。
「!」
寝ぼけた顔で俺を見て、人差し指を俺の眉間に当てた。
「シワ、とれなくなっちゃいますよぉ………」
そう言って、グリグリと指で押した。
「ち、千尋?」
千尋の手がぽふりとシーツの上に落ちた。再び穏やかな寝息が聞こえる。
寝ぼけたのか?
俺は声を出さないようにして笑った。
千尋といると楽しい。いつだって予測不可能だ。
守りたいと思うのに、腕の中に納まってはくれない。心配したり、笑ったり、ふいにドキリとさせられたり。
「おやすみ、千尋」
千尋と同室になれて良かった。
眠る千尋の頬をそっと撫でて、俺も目を閉じた。
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