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桜ノ宮と西京極と悪意の夜1[side 西京極]
【side 西京極】
平野が襲われた日の夜。
僕は苛立ちながら、瀧山様の部屋に向かっていた。先程の堀江との会話を思い出す。
堀江の悪巧みは失敗に終わったんだ。
大人しい下級生を盗撮したり、ストーカーまがいの事をする生徒がいる。そいつをけしかけて平野を襲わせる。堀江はそう言っていた。
『未遂の上に、風紀に捕まったじゃないか!』
僕の言葉に堀江が不愉快そうに答えた。
『はぁ? マジでレイプさせる訳ないじゃん。ちょっと懲らしめてやっただけだよ。風紀の影でいい気になるなってね』
『風紀にばれたら………』
『大丈夫。僕らや親衛隊に繋がる証拠は何もないよ』
堀江はそう言うけど、御影委員長は生徒会親衛隊を疑うだろう。
くそっ。堀江は駄目だ。甘すぎる。
そもそも、チャラいが会計自身が争い事を好まないのだ。
セフレ同士でも仲良くするようにと、馬鹿なことを言っている奴の親衛隊長なんだから。
堀江は制裁を計画するには、詰めが甘すぎる。
そんなことを考えながら瀧山様の部屋のフロアを歩いていると、瀧山様の部屋から桜ノ宮が出てきた。
「ッ!」
「あ。西京極君。こんばんは」
ぼさぼさ頭に分厚いレンズの眼鏡。僕の嫌いなダサい奴だ。
また瀧山様の部屋に………!
一番忌々しいのはこいつだ。こいつを消せればスッキリするのに。
僕は桜ノ宮を睨んだ。
「これ、千里に見せたんだ」
差し出されたのは校内新聞だ。
「これは………」
高槻に肩を抱かれた有栖川千尋と平野を襲い損ねた生徒を担いだ委員長の写真だ。
【黒幕は○○親衛隊?】
僕は見出しを読んで眉を顰めた。
「明日、配られる号外だよ。千里が心配してたよ。まさか自分の親衛隊は関わってないかって」
「………」
「有栖川君が平野君が危ないって気付いたんだって。未遂で済んで良かったよ」
余計な事を………。
「有栖川君は千里のこと、苦手みたいでね。千里の親衛隊が怪しいって委員長に助言してるんだって。それで千里が悩んでいたよ」
「なっ!? 瀧山様はそんなことしていない!」
なんてことだ! 瀧山様に迷惑をかけてしまう。
「有栖川君は風紀のみんなに気に入られてるから、千里は風紀に睨まれることになるね」
桜ノ宮は瀧山様の部屋の方を見て言った。
「平野君を襲った生徒。有栖川君を逆恨みしてるだろうね。もし停学や退学処分になるようなら、捨身で有栖川君に仕返しをするかも………」
僕は桜ノ宮の言葉にピクリとした。
「でも彼は今、反省部屋に入れられてるみたいだよ。明け方は見回りもしないらしいけど、鍵もかかってるし大丈夫だよね」
桜ノ宮が振り返る。
「ああゆう生徒は思い込みも激しいし、暴走して何をするか分からないからね。閉じ込めておくと安心だね」
「………そうだね」
桜ノ宮は微笑んで、エレベーターの方へ歩いて行った。
平野だけじゃない。
有栖川千尋も邪魔だ。
そうだ。堀江のやり方のように、有栖川千尋にも少し痛い目に合ってもらうくらい、どうってことないだろう。
余計な事に首を突っ込むのが悪いんだ。
僕は桜ノ宮を見送って、瀧山様の部屋へと歩いた。
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