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桜ノ宮と西京極と悪意の夜2[side 桜ノ宮]
【side 桜ノ宮】
千里にもらった校内新聞の一面には、平野への暴行未遂の事が書いてあった。
親衛隊の差し金だろうと、千里は面白そうに言った。
新聞を手に持って、千里の部屋を出ると、向こうから西京極が来た。
「西京極君。こんばんは」
睨んでる睨んでる。
僕は笑いたくなる。
この西京極は分かりやすすぎる。プライドが高いくせに操りやすいから、千里のお気に入りだった。
新聞を見せると顔色を無くした。やっぱりコイツが絡んでたな。
悪質で自分の手を染めないやり方は好きだ。
コイツは僕を嫌っているけれど、僕は西京極のこと嫌いじゃない。
だが………有栖川千尋は邪魔だ。
今夜も平野を自分の部屋に泊めている。あいつが動くと、僕は動きにくくなる。
「有栖川君は千里のこと、苦手みたいでね。千里の親衛隊が怪しいって委員長に助言してるんだって。それで、千里がなやんでいたよ」
嘘。
そんなことで千里は悩んじゃいない。でも、西京極は語尾を荒くして言い返してきた。
いいよ。君は素直で可愛い。
「有栖川君は風紀のみんなに気に入られてるから、千里は風紀に睨まれることになるね」
そう言うと、益々顔を顰めた。
あ~あ。西京極の有栖川に対する印象は最悪になったな。
「平野君を襲った生徒。有栖川君を逆恨みしてるだろうね。もし停学や退学処分になるようなら、捨身で有栖川君に仕返しをするかも………」
僕の言葉に西京極の目が怪しく光った。
反省部屋は学生寮の横にある小さな建物だ。ユニットバス付きのワンルームのような部屋に入れられている。
一階の寮長の枚方の部屋に近い。だが枚方が見回りなんてするはずない。
とくに明け方は、逃げたとしても誰も気付かない。
さあ、この駒はどんな動きを見せてくれる?
僕はうっすらと笑って、エレベーターに乗り、自分の部屋へと戻った。
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