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千尋と三個めの目覚まし1
【side 千尋】
─────ピピピッピピピッ
「………う~ん」
目覚まし時計のアラーム音が響いてる。
俺は寝ぼけつつ、アラームを止めようと手を伸ばしたけど、
あれ? 届かない。
何かが邪魔だ。てゆうか、アラーム音がいつもと違うような………
寝ぼけ眼をパチパチさせて、よく見ると何かにくるまれていた。
てゆうか、誰かに抱きしめられてる感が……
俺を抱きしめていたであろう腕が、にゅっと背後に伸びて目覚ましを止めた。
そして再び俺をぎゅっと抱きしめた。
「あ! ちょっ、高槻先輩!」
昨日は高槻先輩の部屋で寝たんだった。
いつのまにベッドに入ったのかな。俺は抱き枕よろしく高槻先輩の腕の中だ。
「高槻先輩。起きてください。朝ですよ」
「………」
「ぐえっ」
寝ぼけてんのか、更にぎゅーっと抱きしめられた。どうにか抜け出そうともがくけど、ムエタイ筋肉には勝てん。
「もう………」
そうだった。この人、寝起き悪いんだよ。三個めの目覚ましが鳴るまで起きないんだ。
だから、余裕を持って15分おきにアラームがセットされてる。
てことは、高槻先輩が起きるのは30分後か。
俺は諦めて二度寝をすることにした。
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