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千尋と三個めの目覚まし2[side 高槻]
【side 高槻】
いつものように俺は三個めの目覚ましの音で起きた。
昨日はぐっすり眠れた。
俺はぼんやりしたまま、腕の中にある温かいものを抱き枕のようにぎゅっと抱きしめた。
「ん?」
………抱き枕?
「ち、千尋!?」
腕の中にいたのは千尋だった。俺はぎょっとして腕を緩めた。
そうだった。昨夜は一緒に寝たんだった。
「ん~………」
千尋がゆっくり瞼を開いた。
寝起きで潤んだ瞳が綺麗だった。
「………はよざいます」
「お、おはよう」
千尋は欠伸をして、眠そうに目を擦った。
「二度寝したから、余計眠いわぁ」
「え、あ」
さっきのは三個めの目覚ましだ。
俺の寝起きの悪さに千尋を巻き込んでしまった。
「す、すまない。千尋」
「いいよぉ」
まだ寝ぼけた顔のまま、千尋は微笑んだ。少し幼く見える表情に、なぜかドキリとしてしまう。
寝起きの顔も可愛いかった。
ついもう一度抱きしめくなってしまう。
「よしっ。起きるぞ!」
ぼんやりしていたかと思ったら、千尋はガバッと跳ね起きた。
「社蓄の朝は早いのじゃ」
「え?」
「あ。なんでもないです」
千尋は「よっ」と、ベッドから降りた。
「平野、起きたかなぁ」
ポリポリと頭をかきながら、自分の部屋に戻っていった。
千尋が出ていった後、俺はドアを見つめたまま動けなかった。
腕にもシーツにも、千尋のぬくもりが残っている。そして、ほのかな残り香に胸が疼いた。
「………参ったな」
ベッドに座ったまま大きく息を吐いて、俺は項垂れたのだった。
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