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千尋とホスト教師とあだ名1

「げぇっ! なんじゃこりゃ!?」 教室で美村が持ってきた新聞を見て俺は叫んだ。 「なんじゃこりゃじゃなくて! アリスちゃん大丈夫なの?」 「そうだよ! 有栖川くん」 新聞を手に硬直してる俺を見て、美村がほっとしたように言った。 「まぁケガも無く、いつも通り元気なのは一目で分かったけど」 「ほんと、無事でよかったよ」 「………」 「アリスちゃん?」 新聞にはあの変態を高槻先輩がやっつけたことになっている。 なんてことだ。俺なのに。 シャイニングウィザードぶちかましてやっつけたのは俺なのにぃ! 「これ嘘だからな。俺だから。変態やっつけたの! 高槻先輩じゃなくて、俺だからな」 新聞から顔を上げて、はっきりと言った俺を美村と園田が苦笑いで見た。 「そっか。アリスちゃん、元気そうで安心したよぉ」 「だから、俺がシャイニングウィザードで………」 「有栖川。ちょっと来い。」 その時、ホスト教師が教室をのぞいて俺を呼んだ。 そのまま理科準備室に連れていかれて、俺はまたホスト教師と二人きりになった。 「もうセクハラするなよ」 俺はドアを背に立ったまま忠告した。ホスト教師は黙って俺を見ていたが、 「すまなかった!」 先生は勢いよく俺に頭を下げた。 「えっ?」 「御影から聞いた。俺のせいで平野もお前も酷い目にあったんだろ?」 頭を下げたまま、要先生は言った。 「俺がまんまと騙されたせいで、すまなかった」 ちょっと驚いた。けど……… 「いや、要先生のせいじゃないでしょ」 「だが、俺が………」 「俺が死ぬ程悩んでるって思って、俺の為に相談にのろうとしてくれたんでしょ」 あの時、俺が高槻先輩を好きになって悩んでるって聞いて、要先生は相談にのろうとしてたんだ。 教え子がホモだったとしても、差別せず真剣に向き合おうとしてた。 今だって本当に悪いと思って、生徒である俺に頭を下げっぱなしだ。 「だから、頭上げて下さいよ」 要先生はゆっくり頭を上げて、俺を見た。見た目と違って生徒想いなんだなぁ。 「あんた、思ってたより良い先生だね」 「!」 「え………うわっ」 俺は要先生にぎゅっと抱きしめられていた。 「おい! せっかく見直したとこなのにセクハラかよっ! このっ………」 「よかった。無事で」 「え?」 要先生は俺を抱きしめたまま、小さく真剣な声で言った。 「お前に何も無くてよかった。何かあったら、俺は一生自分を許せない」 「先生」 俺は先生の背中をポンポンと叩いた。 「俺も無事。平野も無事。変態は反省部屋。問題ないですよ」 要先生は腕を緩めて、俺の顔を見た。 「お前ってやつは………」 「?」 もにっと尻を揉まれた。 「ひゃあ!?」 「このまま歪まず大人になってくれよ」 「離せ! セクハラ教師ッ!!」 さっきまでのしんみりした態度はどこいった!? 俺はホスト教師の腕から、もがいて逃げ出す。つーか、脳年齢は29歳だから、もう大人だっつーの! 「せっかく見直してやったのに」 笑ってるホスト教師にべーと舌を出して、俺は理科準備室を出ていった。

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