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千尋とホスト教師とあだ名2

  今朝は高槻先輩が離してくれなかったので、お弁当を作る時間が無かったんだよね。 だから俺は平野と弁当を買って、風紀室に行くことにした。 平野はヒジキご飯と煮物に煮豆にカップの味噌汁を買っていた。 平野、ヘルシーか。オーガニック女子みたいだ。 昨日の夜は肉だったから、俺は白身魚のフライ弁当にした。 それから風紀室に行って、皆で一緒にご飯を食べた。 あの変態はまだ反省部屋らしい。 「いつまで反省部屋に?」 「処分が決まるまでだな」と、委員長。 「以前から下級生にセクハラしたり、隠し撮りしたりしていたんですよ」と、副委員長。 「さすがにアウトっしょ」と、中津先輩。 「停学か、自主退学か」と、高槻先輩。 「………」 確かに変態行為はいかん。 でもまだ高校生だろ。ここで退学になったら、お先真っ暗だ。 ダメな方向にしか行けなくなってしまう気がする。そもそも、そそのかした奴も悪いし。 かといって、簡単に信じて乱暴しようとするのも許されることじゃないけど。 俺はぐるぐると考えてしまう。 「有栖川くん、どうかした?」 平野が心配そうに聞いてきた。 いかんいかん。一番の被害者は平野だ。 「いや。平野のお惣菜チョイスがオーガニック女子みたいだなぁと思って」 「えっ?」 委員長がブハッと笑い出した。 「前から思ってたけど、お前、変なあだ名つけるの好きだろ?」 「そうでもないですよ」 「金髪変態男にひらパー兄さんにホスト教師だろ」 よく覚えてるなぁ。 「心の中で俺の事はなんて呼んでるんだ?」 「………」 「怒らないから言ってみろ」 「………ハリウッド委員長」 俺の言葉に全員笑い出した。 「なんでハリウッド?」 「筋肉がハリウッドスターみたいで」 「カッコイイじゃねぇか。じゃあ高槻は?」 「高槻・ムエタイ・先輩」 高槻先輩は微妙な表情だが、みんなには大うけだ。やだなぁ。あんまり言いたくないなぁ。 「俺は?」と中津先輩。 「ヤンチャ風紀」 これは園田が言ってたのがうつっただけだから。 「あ~。あたっちゃいるなぁ」 「西宮は?」 西宮副委員長は大丈夫! 変なあだ名つけてないし。 「西宮副委員長」 「えっ。西宮だけ普通かよ」 「まぁ、おもしろいとこ無いもんねぇ」 「………」 あれ。逆にまずかった? 西宮副委員長はすっと立ち上がった。 「コーヒー入れますね」 俺は慌てて西宮副委員長の後を追って給湯室に入った。なんか仲間はずれっぽくなっちゃったかも、と俺は焦った。 「あの、素敵なあだ名考えますから!」 西宮副委員長は俺の方を見て苦笑いだ。 「いいよ。まぁ、確かに俺は面白い人間じゃないし。あだ名で呼ばれたことも無いしね」 もしかして、拗ねてる? 「てゆうか西宮先輩のあだ名は、西宮副委員長なんですよ」 「え?」 「なんか呼びやすいし、他の呼び方って感じじゃないし」 俺、何言ってんだろ? うまく言えなくて、ちょっとアワアワしてたら、西宮副委員長がクスリと笑った。 「いいよ。西宮副委員長で」 そう言って、俺の頭を優しく撫でた。 「コーヒー入れるの手伝ってくれる?」 「はい」 俺は二カッと笑って、副委員長の隣に立った。

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