240 / 306
眠り姫とコミュ障の王子様1
教室に戻ったところで、メールの着信音が鳴った。
「あ!」
ナウシカ兄さんだ!
俺はすぐにメールを読んだ。昨日の事で、俺を心配する内容だった。
『全然大丈夫! あの新聞嘘だから。俺だから、やっつけたの。シャイニングウィザードぶちかましてやったんだ~』と、返信した。
『無茶しちゃダメだよ。心配だから』
『明日、早朝散歩に行くから。ナウシカ兄さんも来れたら来て』
俺はそうメールした。けど、それきりナウシカ兄さんからのメールは来なかった。
………避けられてるのかなぁ。
俺はちょっとヘコむ。でも、それなら心配してメールなんてしないと思う。
一度、ナウシカ兄さ………じゃなくて、蓮とはちゃんと話がしたかった。
「アリスちゃん? どしたの?」
「なんでもない」
ホスト教師が教室に入ってきた。
「お前ら、昼休みは終わりだぞ! さっさと座れ」
うちのクラスのチワワ系が「きゃー先生カッコイイ!」と女子みたいに騒いだ。
いつも通りの一日が過ぎていった。
【side 西京極】
夜遅く、寮の裏に一年生を呼び出した。
平野が襲われた事件から、夜中に外に出てる奴はいないから、誰にも見られなくて好都合だ。
「………これ」
僕は渡された鍵を受け取った。
「こんなことして、大丈夫なんですか?」
大人しそうな一年生は怯えたように言った。
「大丈夫。問題無いよ」
僕はにっこりと笑って答えた。この一年生は枚方のお手つきだ。
何かの役に立つかもしれないと、僕は数人の生徒の弱味になる情報を常に持っている。
この一年生の場合は、枚方とキスしてる写真だ。
こいつは古い家柄の一人息子で、寮長との淫行を親に知られれば、すぐに学校を辞めさせられて軟禁になってしまう。
写真をネタに枚方の部屋へ行かせ、反省部屋の鍵をくすねさせたんだ。
「はい。写真ね」
僕はにっこり笑って、例の写真とデータを渡す。いざという時の為に予備は取ってあるんだけどね。
「枚方の部屋に戻って、朝まで一緒にいるんだ。せいぜいサービスして、朝までぐっすり眠らせておいて」
「な、何をするつもりなんですか?」
「知らない方がお互いの為だよ。明け方、鍵は返すから。学生寮の裏に来て」
「………分かりました」
一年生は不安げな顔のまま、枚方の部屋へ帰っていった。
僕は手の中の鍵を見て薄く微笑んだ。
ともだちにシェアしよう!