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眠り姫とコミュ障の王子様3
「んっ! ふぐぅ!!」
なすすべもなく抱えられて、どっかに連れてかれそうになったその時、
「何してるの!?」
「!?」
後ろから声がして、変態の動きが止まった。
ナウシカ兄さん!!
「………あんた………だれ?」
ヤバい! ナウシカ兄さんが危ない!
俺は変態の手にガブッと噛みついた。
「痛い!」
変態の腕が緩んで、俺の両脚は地面に着地した。
片腕は腰に回ったままだったから変態の腕からは逃げられなかったけど、口を塞いでた手は離れた。
「逃げて! こいつガチでヤバい奴だから! 早く逃げて!」
俺は必死で叫んだ。
なのに、ナウシカ兄さんは逃げることなく真っ直ぐにこっちに向かってきた。
「………あ」
一瞬の迷いも無く、そいつの顎をナウシカ兄さんが掌底で打った。
「ぁがッ!!」
大柄な変態の体が大きく後ろに傾く。ナウシカ兄さんは素早く俺の体を引っぱって、変態から引き剥がした。
「わぁっ」
俺はよろけて、そのまま転んでしまった。慌てて振り返ると、ナウシカ兄さんの腕がそいつの首にまわっていて、いわゆる頸動脈を締めあげていた。
「蓮! ダメ! 死んじゃう!!」
思わず叫んだら、ふっと腕を緩めた。
変態はがくりと木の根元に倒れた。
「あ………」
俺は唖然として、地面にへたりこんだままナウシカ兄さんを見上げていた。
ナウシカ兄さんは慌てて俺に駆け寄った。
「千尋! 大丈夫!?」
「俺よりそいつは!?」
「気絶させただけだよ。何もされてない? 大丈夫なの?」
「俺は大丈夫」
「………良かった」
泣きそうな顔をしたナウシカ兄さんが俺を抱きしめた。
俺の額に額をくっつけて、安堵のため息を深く吐いた。
「………遅くなってごめん」
「………助けてくれてありがと」
俺はまだ少し放心状態のまま、ナウシカ兄さんの背を撫でた。
俺を抱きしめるナウシカ兄さんの体は、少しだけ震えていた。
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