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眠り姫とコミュ障の王子様4

  「千尋、ケガしてる!」 言われた気付いた。転んだ時に手のひらを擦りむいちゃったみたいだ。 「これくらいどうってことないって………わ!」 ナウシカ兄さんは俺をひょいと抱き上げた。 「ちょっと!」 「手当てしなきゃ。俺の部屋に行こう」 「待って。そいつどうするの?」 「ちゃんと連絡しておくから、俺に任せて。千尋の手当が先だ」 気絶した変態をそのままにして歩き出した。 「えっ? あっちの方がヤバいだろ」 「気絶させただけだって言ったでしょ」 「でも………」 「信じて。お願いだから、一緒に来て」 真摯な眼差しで言われて、俺は黙った。抱っこされたまんま、ナウシカ兄さんの部屋に運ばれたのだった。 委員長の部屋も広かったけど、ナウシカ兄さんの部屋も広い。生徒会の特権かぁ。いいなぁ。 「手を洗ってきて」 そう言われて洗面所に通された。 良く見ると土で汚れてる。手を洗いながら、だんだん冷静になってきた。 キュッと水を止めて鏡を見ると、ひどく情けない顔をした有栖川千尋の顔だ。 こんな表情してたのか。そりゃ心配になるよな。 洗面所を出るとナウシカ兄さんが誰かに電話してて、ちょうど通話を終えたところだった。 「あの………」 「こっちに来て座って」 俺はソファに座った。ローテーブルの上には救急箱が置いてあった。 「少し沁みるかも」 ナウシカ兄さんは気遣いながら、消毒液を擦り傷にかけた。 少しだけ沁みて、俺はちょっと顔を顰めた。 「大丈夫?」 「大丈夫」 傷口に薬を塗ってから、大きめの絆創膏を貼った。 「ごめん。俺がもっと早く行ってれば………」 「謝る必要ないよ。ナウシ………蓮のおかげで助かった」 「俺の親衛隊に連絡しておいたから、あの生徒は反省部屋に戻されるよ。その後、風紀と教師に説明しておく」 親衛隊ってそんなことまでするのか。すごいな。 「………」 「千尋?」 俺は急激に情けない気持ちに陥った。 昨日までは調子に乗りまくっていたんだ。正直な話、この学園に来て以来、気持ち的に一番絶好調だった。 あの変態にシャイニングウィザードが決まって、自分がやっつけた気になっていた。 でも委員長は「喜んでただけだ」って言ってたよな。いつもの下ネタだって聞き流してたけど。 平野もクラスに馴染めたし、何もかも順調だと思い込んでた。 いい気になって………馬鹿みたいだ。 「蓮って、ケンカ強いんだね」 「ケンカじゃないよ。護身術をずっと習わされていたからね」 そっか。ガチセレブだもんなぁ。俺と違って。 さっき、蓮を逃がさなきゃ、守らなきゃって思った。 でもそんなの必要無かったんだ。 やばい。すっげぇ情けなくなってきた。

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