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眠り姫とコミュ障の王子様6
「千尋。千尋、聞いて」
切なげなその声に俺はハッとした。
「あの日、高槻に生徒会の影響力を考えろと言われて………千尋に迷惑がかかるんじゃないかって思ったんだ」
「え?」
「俺は人と関わるのが苦手なんだ」
それは薄々感じていた。
「お金や権力や容姿、みんな下心を持って近付いてくる。生徒会役員になんてなりたくなかったけど、他の生徒と一線を引けるから。俺はただ、一人で静かにいたいんだ」
俺は黙って蓮の話を聞いた。
「あの木は秘密の場所だった。誰もいない早朝に、ひとりであの場所にいると落ち着くんだ」
「え………俺、邪魔しちゃってた?」
「違うよ。千尋は他の人と違った。俺の気持ちを尊重してくれた。無理に入ってくる事も、好奇の目で見る事も無かった」
蓮は抱き締める腕を緩めて、俺を見た。
「あんなふうに穏やかに、誰かと過ごしたのは始めてだよ」
「蓮」
蓮は少し眉根を寄せて、話し続けた。
「でも、この学園は特殊だ。カースト制や親衛隊や制裁………。俺と関わるのは千尋に迷惑をかける事になると思ったんだ。だから、千尋から離れようと思った」
「そんなの気にしなくていいのに! パワハラ上司やお局OLのいびりくらい、どうって事ないよ。社蓄舐めんな」
「お局OL?」
「いやっ、何でもない。つまり、蓮が俺の事『もう一緒にいたくない』ってゆうんじゃないんなら、今まで通りでいいじゃん」
「千尋………千尋は嫌じゃないの? 俺が生徒会役員だって知って」
「知ってたよ」
「え? いつから?」
「えっと、コンビニで絆創膏買ってもらった時には知ってたよ。だから? 関係ないでしょ。蓮は蓮なんだから」
「………ありがとう、千尋」
「いやいや、俺こそありがとうね。えっと、これで仲直り? でも、ケンカしてたわけじゃないし」
蓮は笑って「元通りだね」と言った。
「そうだね。あ!」
俺は時計を見て焦った。
そろそろ高槻先輩が起きてしまう。
「俺、帰らなきゃ!」
俺は蓮の腕の中から抜け出した。
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