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南方蓮太郎と象牙の塔1
【side 千尋】
俺は高槻先輩が起きる前に部屋に戻って急いで着替えた。
リビングに出ると、ちょうど高槻先輩が起きてきたところだった。
「おはよう。千尋」
「おはようございます」
良かった。バレなかった~と思ったら、高槻先輩が厳しい顔になってこっちに向かってきた。
「!」
またバレたか!?
固まってると、高槻先輩にむんずと手を掴まれた。
「怪我をしたのか?」
「あ。あ~………寝ぼけて、ベッドから下りるときにちょっとよろけちゃって。机の角でガリーってやっちゃったんです」
なんだ。手の怪我のことか。
高槻先輩は痛々しそうに、俺の手にそっと触れた。
「大丈夫か? 痛くないか?」
「大丈夫ですよ。ただ、お弁当作れなくって」
ほんとは抜け出して、ナウシカ兄さんに会ってきたから時間なくなっちゃったんだけど。
「そんなの構わない。朝食も俺が用意するから、千尋は座ってろ」
うう。ちょっと心苦しい。高槻先輩に嘘ついてるんだし。
「ありがとうございます」
「委員長は今朝はもう登校したそうだ」
「え?」
「詳しくは聞いていないが、何かあったらしい。委員長一人で構わないと言ってたが………」
あ。きっと変態の脱走の事だ!
ナウシカ兄さんから話すって言ってたけど………俺は少し不安になる。
「千尋?」
「なんでもないです。ちょっとお腹空いて」
「ああ。少し待ってくれ」
高槻先輩はいつも通り爽やかに笑った。
【side 御影】
俺は意外な奴からの連絡で、朝一に風紀室まで来ていた。
風紀用と個人のと、スマホは二台持っている。風紀用の番号は公表していて、何かあればこの番号にかかってくる。
早朝、この風紀の番号に、俺にだけ話がしたいと連絡があった。
「で? 何があった」
委員長の椅子に座る俺の目の前には、生徒会書記の南方蓮太郎が立っていた。
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