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南方蓮太郎と象牙の塔2[side 御影]

平野を襲おうとした生徒が反省部屋から逃げ出したところを南方が取り押さえて、親衛隊の奴らで反省部屋に戻したと言う。 俺は顔を顰めて聞いた。 「全部話せ」 反省部屋を抜け出しただと? 誰かが手助けしたに違いないが……… そもそも引きこもりのこいつが何故、問題の生徒を捕まえたんだ。 「千尋と会っていたんです」 「はぁ?」 姫の名前が出た事で、俺の眉間の皺はますます深くなる。 「時々、早朝に待ち合わせて一緒に散歩していました。今朝、俺が少し行くのが遅れて、千尋が襲われているのを見て………」 「あのバカ! また無茶やったのか」 俺は思わず苛立った声で言った。何度も自覚しろと言っているのに。 「千尋のせいじゃありません。俺の事をずっと気にかけてくれてた。なのに、気持ちに迷いがあって遅くなったんです。千尋は悪くない」 まっすぐに俺の目を見て、南方が答えた。 それにも少し驚く。ぶっちゃけ、こいつはコミュ障だ。 それでも以前は休みがちだが授業に出ていたし、生徒会室にも来ていた。 だが、桜ノ宮とつるみだしてから、完全な引きこもり状態だった。 「不可触の君」だの「深窓の王子」だの呼ばれて、生徒会メンバーの中で最も神聖視されている。 こいつの親衛隊は真面目な生徒が多いが、南方に何かあれば手段を選ばないだろうという危うさがある。 「有栖川千尋とはどういった関係だ?」 「友人です」 「………友人ねぇ。引きこもってた部屋から出てきたのは、有栖川千尋の為だろ」 「今朝の事、他の生徒には内密にしていて欲しいんです。他の風紀にも」 「あぁ? 風紀にもだと」 「千尋はあの場所には居なかった事にして下さい。千尋を巻き込みたくはない」 「………」 俺と二人きりで面を合わせて、真正面から目を見返せる奴は少ない。 ましてやこいつは、ついさっきまで象牙の塔よろしく自室に引きこもっていたんだ。 象牙の塔に閉じ籠っていたコミュ障の王子を外界に出したのは姫ってわけか。 俺はニヤッと不敵に笑った。 「いいだろう。姫とは後で話しておく」 毎回、姫には驚かされる。やっぱり面白い奴だ。 それに………確かにこれ以上、あいつを目立たせたくはなかった。 「お前。桜ノ宮はどうすんだ?」 「桜真? 桜真が何か?」 「有栖川千尋を取るなら、桜ノ宮とは距離を置け。ありゃ毒蛇だぞ」 南方は悲しげな瞳をして俺を見た。 「桜真は友人です。毒蛇なんかじゃない」 「まぁいい。座れ。今朝の事を詳しく書面にしろ。有栖川千尋の事は省いて構わん」 最初は平野がターゲットだった。 都合のいい偶然なんて信じない。今回は姫を狙わせたのだろう。南方がいなければ、本気でヤバかったかもしれない。 「………」 俺はスマホを手にして、メールを打った。

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