【side 桜ノ宮】 夕飯を食べると、有栖川千尋は帰っていった。 突然部屋に来たものだから、少し驚いたけど、どうやら僕を探りにきたようだ。 ………あの顔。 僕の作り笑いを見抜いている。その上で突っ込んだ質問をしてきた。 お綺麗な顔をしたお姫様かと思っていたけど、想像以上にやんちゃなお姫様のようだ。 正直、邪魔だな。 蓮を襲ったという西京極がけしかけた生徒だが、本当は有栖川を襲わせようとしたはずだ。 蓮が有栖川に会いに行ったことで助けられたんだろう。そのせいでややこしいことになった。 ややこしいことや揉め事は好きだ。 だが、今回のは面白くない。 蓮は僕の言いつけを破って有栖川に接触したし、西京極はへまをした。 まぁ、西京極から僕に繋がるような事は何もないんだけど。彼は僕を嫌っているしね。 あの綺麗な顔をした親衛隊長が風紀から罰を受けて屈辱に染まるのも見ものだ。 けれど今は……… 正義の味方きどりで平野に関わる有栖川千尋が屈辱を味わうのを見たい。 彼は天然だ。僕のように計算して人を操ってるんじゃない。 ありのままで厄介な風紀委員長や平野、蓮を惹きつけている。 千里も有栖川を気に入っている。正宗もだ。 僕はこの閉ざされた学園でもっと遊びたいんだ。生徒会の頂点にいる正宗は、僕が何をしようと僕を止めはしない。 僕の掌の上で傷付けあい、嫉妬し争い合う奴らを見るのは楽しい。 そうだ。 少し噂でも流そうか。 二年のDクラスには柄の悪い生徒達がいる。素行の悪さから、全寮制学園に放り込まれた奴らだ。そいつらにだけ噂を流そう。 今なら、有栖川千尋に何をしても生徒会親衛隊のせいに出来る。 どんな事をしても、疑われるのは親衛隊の西京極だ。 どんなことでも………ってね。