258 / 306

眠り姫と黒い罠1

   【side 千尋】 あれから三日経ったけど、桜ノ宮と話した事は委員長にはまだ話していない。 怒られるだろうし、心配もかけるだろうし。 平野と桜ノ宮も特に問題なく、同室生活を送っているみたいだ。 どうしたもんかな? それに、あくまでも俺のカンだ。はっきり桜ノ宮がラスボスって分かった訳じゃないし。 それでも平穏無事な日々が続いていたので、俺はこれ以上余計な事はせずに、このまま風紀に任せておくのがいいのかも、と思っていた。 今日最後の授業だった移動教室から帰って来た時、机の中になんかメモが入ってた。 「?」 平野からだ。どうしても直接聞いて欲しいことがあるから、あの天使像の前に来てほしい。他の人に聞かれるとダメな話だから俺一人に来てほしいって書いてあった。 「………」 なにかあったのか? 緊急の事なら風紀に電話するはずだし、メールや電話じゃなくてメモって………。 あ。もしかして、平野の部屋に押しかけて桜ノ宮と話した事と関係あるのかも。 だから、わざわざメモなんかで伝えてきたのかな。 ………俺、また余計な事しちゃったのかなぁ。ちょっと罪悪感だ。 「アリスちゃん?」 「なんでもない」 俺はメモを隠した。 放課後、俺は風紀室に用があると嘘をついて美村達と別れた。 急いで裏庭に向かう。だってあそこは人気は無いし、平野が襲われかけた場所だ。 そんな場所に呼び出すなんて、なんか変だと思ったけど………それだけ人に聞かれたくない深刻なことなんだろうと思った。 「平野?」 まだ平野は来てなかった。 カサリ、と音がして振り返ると知らない生徒が四人いた。ネクタイの色は二年だ。 「マジで一人で来たよ」 「優し~。惚れちゃうね」 「近くで見てもキレイだなぁ」 なんか、すごく嫌な感じだ。 「………なに?」 「けっこう気ぃ強いんだってね」 制服をだらしなく着崩した奴が言った。髪も染めてるみたいだし、四人ともガラの悪い雰囲気だった。 「あ~あれだよ。親衛隊の制裁? ってやつ」 舐めるように俺を見て言った。 「制裁って………お前ら、そんなことしてただで済むと………」 「風紀にちくっちゃう?」 「風紀委員長にも誰にも言いたくないようなコト、してあげるから」 そのいやらしい笑い方のゾッとした。 俺は咄嗟に走り出したけど、四人がかりで追いかけられすぐに捕まった。 「このっ! 離せ………んぐ!」 「やっべぇ。柔らかい。すげぇ良い匂いする」 「ほら。早く運べ」 俺は担ぎ上げられた。 なんだよ!? またかよ!  俺は自分の学習能力の無さに泣きたくなった。てゆうか、 前回よりもっとヤバいだろ!!

ともだちにシェアしよう!