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眠り姫と黒い罠4
「千尋ッ!!」
保健室のドアが壊れるんじゃないかって勢いで開いて、委員長が飛び込んできた。
「千尋! 大丈夫か!?」
汗だくで悲痛な顔で俺に駆け寄った。珍しい。委員長のこんな顔。それに………
「い、いいんちょ………千尋って、よんでる………めずらしいね」
「お前、こんなときに………」
委員長はハァーっと息を吐いて、がくりと肩の力を抜いた。
「大丈夫か?」
委員長の大きな手が俺の頬を撫でた。
「うん。落ち着いた………」
俺は深呼吸をして目を閉じた。
「お前が助けたのか。礼を言う」
「お前からの礼なんざいらねぇよ」
「………」
「けど、未遂で助けることができて良かった」
その時、保険医の伊丹先生が走ってきた。
「ハァっ、千尋くん!大丈夫!?」
「てめぇはずっと保健室にいろ!」
会長が伊丹先生を怒鳴りつけた。
伊丹先生はいつものんびりしてるのに、こんなに焦った顔してるのも珍しいな。
まだぼんやりした頭で、俺は呑気なことを考えてた。
「御影くんも西大路くんも、ちょっと外へ出ていてくれる」
伊丹先生は俺の側に来て俺の様子を確認し、二人にそう告げた。
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