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生徒会室と灰色の空1[side 御影]
千尋が入院する二日前、事件当日の風紀室。
【side 御影】
伊丹が姫を病院に連れて行くのを見送ってから、俺は風紀室に戻った。
こんなに怒りが湧き上がっているのは久しぶりだった。
風紀室のドアを開けると、殴られて血を流した生徒が四人、床に正座していた。俺を見てビクッと震えあがった。
「何て言ってる?」
「親衛隊に頼まれて有栖川に制裁しようとしたと」
西宮が俺に報告した。
「平野の名前で手紙を有栖川の机に忍ばせていたそうです」
あいつ………また一人で無茶しようとしてたのか。
俺は苛立ちを隠さず、四人をじっくりと睨みつけた。一番右端に座ってる奴がリーダー格か。
「おい。お前らは依頼されて制裁しようとしたっていうのか」
「はっはい! 俺らも利用されたんです!」
俺はしゃがんで、リーダー格の生徒を正面からじっと見た。
「嘘だな」
そう言って立ち上がる。
「逆じゃねぇのか? お前らが親衛隊の制裁に見せかけて、有栖川千尋をレイプしようとした。違うか?」
「ちっ違います! 俺らマジで………がッ!!」
立ち上がって弁解しようとした奴を高槻が蹴り上げた。そいつは壁にぶつかって派手に転げた。
「高槻!」
西宮が諌めたが、高槻は怒りを隠そうともせずに言い放った。
「こいつが暴れようとしたから、今のは正当防衛だ」
「暴れようとなんて………うぐっ!」
今度は中津が上から靴で背中を踏んで押さえつけた。
「暴れんな」
「素行の悪い生徒から風紀室で話しを聞こうとしたら暴れ出した。ちったぁ殴る蹴るしても仕方ねぇなぁ。正当防衛だ」
「そんな、ひぃ!」
西宮は眉を顰めて見ていたが、止めなかった。
俺は一番下っ端であろう奴の髪を引っ掴んで顔を上げさせた。
「吐け」
「あ、あの、噂があって」
下っ端はゴクンと唾を飲み込んで話し始めた。
「今なら有栖川千尋に何をしても、親衛隊のせいにできるって。それで、平野って奴を眠り姫が気にかけてるってことは校内新聞で読んでて………俺たち、ほんとに来るとは思わなかったし、悪ノリの延長で………げぇッ!」
俺は反射的にそいつの腹を殴っていた。
「悪い。手が滑った」
そして西宮に言った。
「空いてる反省部屋に四人一緒にぶちこんどけ」
西宮と中津の二人で、そいつらを反省部屋に連れて行かせた。
風紀室には俺と高槻が残った。
「千尋は………」
「あいつらには何もされてないようだ。西大路が駆け付けたときは押さえつけられちゃいたが未遂だった」
「………」
俺の言葉に高槻は少し体の力を抜いた。
「病院へは別の理由だ。発作を起こしたらしい」
「発作を!?」
高槻の顔が蒼白になる。
「大丈夫だ。俺が話した時は落ち着いていた。病院は嫌いだ~って言ってたぞ。こんな時でもあいつらしい」
俺は少し笑って見せた。高槻は引き攣った顔をして、唇を震わせていた。
「俺がちゃんと送っていたら………俺が………」
「誰も予想してなかった。食堂で公にしてから、親衛隊も大人しくなってたんだ。南方の親衛隊と風紀が組んで裏で手引きした奴を探っていた。何か起こる気配なんか全く無かった。俺が甘かったんだ」
「………でも、俺が………もっと、ちゃんと………」
俺は高槻の首を掴んで引き寄せた。
「泣くな。高槻」
高槻は俺の肩に顔を埋めて、小さく震えている。
「千尋は無事だ。何もされちゃいない。病院へは検査の為だ。大丈夫だ。お前のせいじゃない」
俺は高槻の背中をぽんぽんと叩いた。
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