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生徒会室と灰色の空3[side 桜ノ宮]
「やめろ! 桜真!」
桜真はシャツのボタンを全て外して開いて見せた。俺は顔を背けた。
「見ろよ正宗。見ろ!」
俺はゆるゆると視線を桜真に戻した。
桜真の下腹部に………引き攣れた歪な傷痕。
「昔はお前の方が体が小さかった。泣き虫で、僕の後を追ってついてきてたよな」
「………桜真」
「あの日、みんな変わってしまった」
桜真はそっと俺に近付いた。
「僕はお前のように成長するものだと思ってたよ。大きくて、強くて、自信家だ」
そっと俺の頬に手を添えた。
「でも無理だ」
「………」
「お前のようになりたかった」
桜真の灰色の瞳から、ころりと涙が伝った。
【side 桜ノ宮】
僕の傷痕を見た正宗は怯えたように視線を反らしたが、僕は許さず傷痕を見せた。
あの時、僕も正宗も8歳だった。
正宗はこの傷跡がトラウマだ。でかい図体をしてるくせに子供のように怯えている。
「お前のようになりたかった」
そう囁いて、涙を流して見せてやった。正宗は傷付いたような表情で僕を見ている。これで正宗はもう僕には逆らえない。
「お前は、僕だ」
「桜真」
そんな顔をして、自分が不幸だとでも思っているのか?
そんな恵まれた体と自由を持っているくせに。
「この学園に居る間は、僕の好きにさせて。お願いだ。正宗」
「………」
正宗はそれ以上、何も言わなかった。言えなくなったのだろうけど………。
そうだ。お前には悲劇の生徒会長にでもなってもらおうか。
有栖川千尋には生贄の子羊にでもなってもらおう。
正宗。お前のせいでまたひとり、運命が変わるんだ。
僕は心の中で、陰鬱に笑った。
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