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千尋と南の島6[side 有栖川父]
【side 千尋】
俺はデザートに出されたマンゴーのシャーベットを食べ終え、食後のハーブティーも飲んだ。
不思議な香りのお茶だったけど美味しかった。
「ちーちゃん。眠いの?」
「………眠くない」
そう答えたけど、カクッと船漕いじゃってる。急激に眠くなってきた。
なんだろ? 緊張の糸が切れたのかな。
有栖川父が立ち上がり、俺の側に来た。
「寝室に連れていってあげよう」
「………いい………あるける………」
半分、目を閉じちゃってる俺に有栖川父は笑って言った。
「たまにはパパに甘えてごらん」
「………やら………ん………」
そっと抱き上げられた。
「んん………おろせってばぁ………あるけるもん………」
「可愛い。千尋」
おでこにチュってキスされた。うげぇ。
でも俺は抗うことができずに、有栖川父の腕の中にすっぽり収まった。
抱っこされて寝室まで運ばれて、そっとベッドに下される。
「いい子だね。千尋」
「………るさい」
有栖川父はクスクスと笑いながら、俺の髪を撫でた。
「何も心配はいらないからね。最初からこうすべきだった」
「………ん」
有栖川父が何か言ってるけど、もうダメだ。俺は深い眠りへて落ちていった。
【side 雅信】
よく薬が効いているようだ。
眠る千尋の頬をそっと撫でた。
千尋が発作を起こしたと連絡があった時、私の心臓も止まってしまうかと思った。
北条から「安定している。もう心配はいらない」と言われても落ち着かなかった。
もう二度と、失うわけにはいかない。
千尋が退院して学園に戻りたがっていると聞いて頭が痛くなった。
この「千尋」は親の心配なぞ気にもとめないのだ。少し強引だったが………最初からこうすべきだった。
私は立ち上がり、寝室と繋がっているシャワールームへ行きシャワーを浴びた。
望応学園は私の卒業校でもある。
学生時代、私は生徒会長を務めた。良家の子息達ばかりの品のある学園だったはずだ。だから千尋を預けたのに。
「………」
千尋を襲った生徒達は退学にした。本音では殺してやりたいくらいだが。
家の方にも圧力をかけているので、もう今までのようなまともな暮らしは出来ないだろう。
シャワーを浴び終え、ガウンを着て寝室に戻ると、千尋はぐっすりと眠っている。
私はそっとベッドに入り、千尋を腕に抱いた。華奢な体のぬくもりが愛しくてしかたない。
「愛しているよ。千尋」
すべらかな頬にキスをして、静かに目を閉じた。
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