274 / 306
園田と鳴海奈留美1[side 御影]
数日前、千尋との電話の直後の風紀室。
【side 御影】
姫との通話が不自然に切れた。
姫のスマホはずっと電源が入っていない状態だったので病院にかけ直したが、のらりくらりとかわされて話にならない。
どうやら父親が来ているらしいが………姫の言い方だと、少し面倒臭い親父らしいな。
息子が襲われたんだ。心配するのは当たり前だが………
姫を襲った生徒は全員退学になった。
あまりに急で尋問する時間すら無かったから、黒幕の存在を調べる事が出来なかった。
自主退学だと聞いたが、姫の父親が圧力をかけたのだろう。有栖川家も相当な権力を持つ家柄だ。
姫が庶民的だから忘れがちになるが、古い家柄で華族の血筋だった。
『俺、学校辞めさせられるかも』
不安げな姫の声を思い出す。俺は立ち上がって風紀室を出た。
「委員長」
ちょうど高槻が風紀室に向かって歩いてきたところだった。
「姫から電話があった」
歩きながら高槻に話す。
「千尋は!? 千尋は大丈夫なんですか!?」
「途中で切れた。様子が変だったし、病院の奴らと話しても埒があかねぇから直接病院行ってくるわ」
「俺も行きます!」
俺は高槻と二人で姫が入院していた病院に行ったが………
「退院した!?」
俺は驚いて聞き返した。つい数時間前に電話で話したばかりだぞ。嫌な予感がする。
「北条先生には会えるか?」
「申し訳ありません。急な手術で」
看護師に言葉を濁され、ここにいても無駄だと悟って俺と高槻は病院を出た。
「い、委員長」
「………」
その時、スマホが鳴った。
姫か!?
急いで着信を見ると美村からだ。
「どうした?」
『御影委員長! アリスちゃん、学校辞めたって!』
「はぁ!?」
『ホスト教師が言ってたんです。問い詰めたけど、詳しい事は分からなくて。ただ、学校を辞めて父親について行くことになったらしいって』
俺は姫の言葉を思い出した。
過保護すぎて軟禁状態にされたことがあるって言ってたよな。
あいつは逃げ出すような奴じゃない。
襲われたからといって父親に泣きついて転校なんてしないだろう。
「くそ。姫の家まで行ってみるか」
『アリスちゃんの家?』
「有栖川邸だ。調べりゃすぐ分かる」
『もしもし御影先輩! 僕も行きます!』
今度は園田だ。
俺と高槻は美村達と合流して、四人で有栖川邸に行くことにして通話を終了した。
「委員長。いったい………」
「姫、学校辞めたってよ」
「!?」
「あいつは逃げ出すような奴じゃない。相当、過保護な父親が絡んでるみたいだ。行くぞ。高槻」
俺達は車に乗り込んで、有栖川邸を目指した。
ともだちにシェアしよう!