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園田と鳴海奈留美3[side 園田]
【side 園田】
有栖川くんが海外だなんて………もう戻ってこないだなんて。
みんな思いつめたような表情で黙り込んでしまった。
僕は重い空気に耐えきれずに立ち上がり、そっと応接室を出た。
あわよくば高槻先輩と有栖川くんの熱い再会だとか、生徒会の王子さまと風紀の騎士が眠り姫を取り合っちゃったりして………だとか、ちょっとのんきな事を考えていた自分が恥ずかしい。
顔でも洗って反省しようと、お手洗いの場所を探した。
あ、さっきのメイドさんだ。ちょうどよかった。お手洗いの場所を聞こうとメイドさんを追いかけた。
後ろから声をかけようとして、
「イケメンパラダイスじゃないの………ガチムチから細マッチョ、それに王子様まで………やはり千尋様はBL学園にいるべきなのよ………」
「!?」
とんでもない独り言が聞こえてしまった。
え? え!? BLって言った?
「あの」
「はぅあ!!」
このメイドさん。今、「はぅあ」って言った!
メイドさんさコホンと咳払いをして、
「何かご用でしょうか?」
クールな雰囲気で返したけど、さっきの聞こえちゃいましたよ。
「今、BL学園っておっしゃいましたよね」
「そんなこと言っておりません」
「ガチムチ」
「言っておりません」
「王子様って」
「何の事でしょう?」
「南方先輩って生徒会の書記で、王子様って呼ばれてるんですよ」
「あのお方が生徒会書記!?」
「はい。親衛隊も俺様生徒会長の次に規模が大きくて、深窓の王子様って呼ばれてます」
「やっぱり! 見るからに王子様ですものね」
「御影委員長は、あ、ガチムチの人ね。風紀委員長で学園の王様みたいなものです」
「王様!」
メイドさんの目が輝き、はすはすしてきていた。
「あなた、腐女子メイドでしょ」
「………」
「僕、腐男子なので大丈夫ですよ」
「あ、あ~………ああ」
メイドさんはクールな外見からは想像もつかない間抜けな声を出した。
「ちょっと、こちらへ」
そう言って、僕の手を引いて空いてる部屋へ入った。
「この事はご内密に」
深々と頭を下げられて、僕は慌ててしまう。
「あのっ。頭を上げてください。誰にも言いませんから」
メイドさんはほっとしたように息を吐いて顔を上げた。
「あまりに理想的な殿方ばかりだったので、少し興奮してしまいました」
全く興奮の色など見えないクールな表情だけどね。
「腐女子メイドさんはお名前は? 僕は園田です。有栖川くんとは同じクラスで友達です」
「園田様、鳴海奈留美 と申します」
「なるみなるみ?」
「………鳴海です」
「鳴海さん。有栖川くんはどこに行っちゃったんですか?」
鳴海さんは少し迷ったようにして、重い口を開いた。
「千尋様は雅信様とご一緒に、有栖川家の所有する南の島に療養を兼ねて立たれました」
「み、南の島って」
「雅信様は千尋様を目に入れても痛くないほど、ビルの屋上から落ちてきても顔面で受け止めるほど、脱いだシャツをくんかくんかするほど溺愛されています」
「えっ。うん。ええ!?」
この鳴海さんて人は表情と言っていることが一致しないみたいだ。
くっきりとした一重の瞳で目力があって、中性的でクールな雰囲気だ。
黒髪ボブでスラリとしている。身長は僕と同じか、少し高い。宝塚系のコスプレ似合いそう。
「もう千尋様と離れて暮らすおつもりは無いようです。学園に戻されることも無いでしょう」
「そんな………」
ほんとにもう会えないってこと?
僕は急激に寂しくなってしまって、涙目になってしまう。
「私も残念です。あんな絵に描いたような色とりどりの攻め要員に囲まれて。千尋様はさぞ素敵な学園生活を送られていたでしょうに」
鳴海さんがものすごく真面目な顔で、腐った発言をしたとき、僕はある計画を閃いたのだった。
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