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千尋と優雅な拘束の日々1
【side 千尋】
南国の鳥のさえずりが聞こえて、俺はぼんやり目を覚ましつつあった。
「う~ん………」
なんだろ。泥のように眠ったって感じ。
窓が空いてるみたいで南国の風が気持ちいい。
俺は頬に当たる温かいものに、スリスリと頬をすり寄せた。
くすくすと笑う声がして、パチパチと瞬きをして目を開けた。
「くすぐったいよ。千尋」
「!?」
俺はまた有栖川父とベッドの上だ。
しかも仰向けに寝てる有栖川父の上に寝てる。俺がスリスリしてたのは有栖川父の胸板だ。
肌蹴たシャツから、けっこう逞しい胸板が覗いている。
着痩せするのか、程よく鍛えられてる感じだ。
「おはよう。ちーちゃん」
ぎゅっと抱きしめられて、おでこにキスされた。
「うげぇ」
「もう少しゆっくりしていていいよ」
「いい。おきる」
俺は有栖川父から離れようとするけど、まだ寝ぼけてる感じでうまく起き上がれない。
あれ? おかしいなぁ。
体がまだ起きてないみたいだ。
「ほら。いい子だから」
甘く囁いて、有栖川父が大きな手のひらで俺の頭を撫でながら、胸元に抱き寄せた。
「はなせ、はなして………」
「いい子だ」
有栖川父の心臓の音を聞いていると、またぼんやりしてきた。
さっきから優しく髪を梳かれて、それが妙に心地いい。やばい。ウトウトしそう。
「可愛い。ちーちゃん。パパの宝物だよ」
うげぇ。キモイ!
高校生の息子に言う言葉かよ。
でも抗えなくて、俺は有栖川父の胸枕で二度寝してしまった。
次に目覚めた時も有栖川父の腕の中だった。俺はぬいぐるみか抱き枕かよ!?
「おはよう。ブランチにしよう」
今度はほっぺにキスされた。
そのまま抱っこされて、寝室から続いてる洗面所に運ばれた。
「ちょっ、下ろせって!」
「ほら。顔洗ったら戻っておいで」
鏡の前で下ろされて、「寝ぐせも可愛いよ」と、頭を撫でられた。
「なんなんだよ」
なんか、暴走してる?
日本にいた時よりもひどい溺愛っぷりだ。こんなべたべたな親子っているか?
ため息をついて鏡を見る。
「うげ」
俺の髪はビンビンに跳ねて、確かにすごい寝ぐせだった。
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