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鳴海と『風と木の詩』1[side 園田]
【side 園田】
有栖川くんちを出て、僕たちは御影委員長の家に行くことになった。
御影委員長の家も豪邸だった。
委員長の部屋で作戦会議だ。
不謹慎かもしれないけど、ワクワクしてきちゃう。
あの風紀委員長の部屋で、風紀の騎士と生徒会の王子さまと一緒に、ヤンデレの父親に拉致された眠り姫を救いに行く計画中なんだ。
ワクワクせずにいれないでしょ。
「園田様。心の声が漏れております」
鳴海さんにコソッと言われて、ハッとした。委員長達には聞こえてなかったみたい。気をつけなきゃ。
美村くんがちょっと不思議そうに僕らのやりとりを見てる。まぁね、いつもはこのポジションは美村くんだしね。
「姫は今どこにいるんだ?」
「姫?」
「あっ。御影委員長は有栖川くんのこと、姫って呼んでるんです」
今度は僕が鳴海さんにコソッと教えた。鳴海さんは小さく「なるほど」と言った。
「少々お待ちを」
鳴海さんはバッグからノートパソコンを出して電源を入れた。
しばらくしてから「こちらです」と、みんなに画面を見せた。
グーグルマップだ。僕にはよく分からないけど、位置的な事や、そこに行くまでの方法とか、鳴海さんがあれこれ説明していた。
「密かに島に行くには、船でこちらの入り江から入るのがよいかと。情報によると、千尋様の護衛に新しい者を雇われたそうで」
「詳しいな」
「メイドのネットワークです。伏見伊織という護衛が千尋様にずっと張り付いているそうです。かなり優秀だそうですが、隙を見ては若いメイドを口説いているそうです」
そんな人が有栖川くんの護衛で大丈夫なのかな。
「雅信様の護衛を長年務めている穂高さんの古くからの友人で、今回の千尋様が襲われた事、発作の事もあって、伏見伊織に千尋様をお守りするように頼まれたそうです」
鳴海さんは付け加えるように、ボソッと呟いた。
「穂高さんは雅信様に犬のように一途で、雅信様は千尋様を異常なまでに溺愛。そこに穂高さんと腐れ縁の女好きでちょいワル伏見、なかなか美味しい構図なのです」
「何だ?」
「なんでもございません」
鳴海さんも心の声が漏れやすいのかも………でも確かに美味しい設定だ。
「うちのクルーザーを使えばいい」
クルーザーとか、さらっと言っちゃう御影委員長はやっぱり頼もしい。鳴海さんがちょっと残念そうな顔をしてる。
鳴海さんは書記様を推してるみたいだからね。
「俺も一緒に行きます。千尋に会いたい」
書記様が御影委員長にそう言った瞬間、鳴海さんの顔がパァアと輝いた。
みんなは気付かない程度で、僅かにだけど。
腐女子だって知ってるから、僕は分かっちゃうけどね。
「俺も行く」
高槻先輩がそう言った瞬間、僕の顔もパァアと輝いた。隣の鳴海さんが「おっ」という顔で僕をチラ見した。
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