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千尋と水着と伏見さん1
[side 千尋]
……まただ。
翌朝、俺は有栖川父と同じベッドで目覚めた。
「……げ」
ガウンだけ羽織っていたみたいで、寝てる間に全開になってる。しかもノーパンじゃねぇか! 最悪。
俺は仰向けに寝てて、ガウンの前は大きく肌蹴ている。かろうじてウエストに腰紐がゆるく引っかかってる感じでほぼ全裸だ。そんな俺の腰を抱くようにして有栖川父が眠っている。
「………」
俺は奴を起こさないように、そろそろと腕の中から抜けようとした。
「わっ!?」
ぎゅっと抱き寄せられた。
「………おはよう。早いね。ちーちゃん」
「離せよ。暑苦しい」
有栖川父は低く笑って、俺の頬にキスした。結局、有栖川父は俺を離さず、しばらくベッドでうだうださせられた。
「ここでの生活は慣れた?」
「慣れないよ。そもそも俺はセレブじゃないんだから。日本に帰りたい」
「まだ駄目だ」
有栖川父の声が少し硬くなった。おっと、やばいかも。
「千尋が日本に残りたいと言ったから望応学園に入れたのに、あんなことになったんだ。しばらくはパパと一緒にいるんだ。もう二度と、ちーちゃんをあんな目に合わせる気はないからね」
有栖川父はそう言って、俺の頬を手のひらで優しく撫でた。
タチの悪い生徒に襲われかけた件だ。まぁ、心配なのはわかるけど。
……有栖川父はあの生徒達に何をしたんだろう。
「あいつら、どうなったの?」
「二度と千尋の前には現れないよ。大丈夫。パパにまかせなさい」
「………」
この表情の時の有栖川父は、なんというか……少し怖い。俺はコクリと唾を飲んで黙り込んだ。
有栖川父の機嫌を損ねることは逆効果だと悟った。こいつは俺を一生この島に閉じ込めとくこともできるだろう。
有栖川父は俺の保護者だ。『山田太郎』としての俺はとっくに死んでるんだ。どこにも行く場所も、ここには頼れる人もいない。決定権は有栖川父にある。
「わかった。もう聞かない」
「いい子だ」
満足そうに微笑んで、俺の額にキスをした。
とりあえず、今はこいつのご機嫌取りをするしかない。
日本に帰ればなんとかなるだろ。俺の特技は上司の太鼓持ちだ。こいつは、ちょっと上司とは違うけど……有栖川父の機嫌がよけりゃ日本にも帰れるだろ。
俺はポジティブに考えることにした。
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