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千尋と水着と伏見さん3[side 伏見]
【side 千尋】
「よっしゃ!」
俺はプールサイドから走って、勢いよくドボンと飛び込んだ。
「!?」
うそっ! めっちゃ深い! 全然足が届かないしぃ!
びっくりしてもがいた俺は、ブクブク沈んでった。なんてこったい。この歳で溺れるとは。
その時、力強い腕に抱かれて水面にザバァッと上がった。
「大丈夫ですか!?」
俺はプハッと息をした。伏見さんだ!
「思ったより深かった!」
我ながら間抜けだ。
そんな俺に伏見さんがクスッと笑った。いつもの作り笑いと違って、ほんとに笑ってる。
なんかホッとして俺もアハハと笑った。
一旦プールから上がって、メイドさんが持ってきてくれたバスタオルを頭からかぶった。伏見さんのスーツはびしょ濡れだ。迷惑かけちゃったなぁ。
謝ろうと思ったら、伏見さんがシャツを脱いで上半身裸になった。
ムッキムキだ!!
「すげぇ! 伏見さんもハリウッドだ」
思わずそう言ったら、不思議そうな顔でこっちを見た。委員長より本気のガチムチだ。
無駄の無いプロの肉体って感じ。なんか傷だらけだし。
「怪我したの?」
「仕事で。対象を守って負った怪我は男の勲章みたいなものです」
伏見さんは少しふざけた口調で言って、ニヤリと笑った。
俺は胸の傷を見られることに抵抗があって、Tシャツなんか着てる自分が恥ずかしくなった。
男なんだから傷痕なんて気にする必要ないよな。そう思ってTシャツを脱いだ。
【side 伏見】
千尋がおもむろに濡れたTシャツを脱いだ。
「………」
細い鎖骨、薄いピンク色をした乳首、白い肌を伝う水。華奢な胸に残る傷痕。
………エロい体してるな。
俺は舐めるように千尋の裸の上半身を見つめた。
「やっぱり気持ちわるい?」
「?」
千尋が不安げに聞いてきた。胸の傷痕を気にしているようだ。
「ちっとも気持ち悪くなんかありませんよ」
エロい体してるからガン見してたなんて言えるか。
「傷痕なら、ほら。私の方が多い」
千尋に背を向けて見せた。若い頃、対象を庇って受けた傷だ。今ならもっとうまく躱せる。
「わ………痛かったでしょ」
千尋は俺の背の傷痕に、華奢な指でそっと触れた。思わずゾクリとした。
いちいち可愛いし、そこはかとなくエロい。仕事じゃなきゃチンコ勃ってるぞ。
いかんいかん。
「……浮き輪を持ってこさせましょう」
俺は誤魔化すように、メイドを呼び寄せた。
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