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高槻と南方1
【side 千尋】
俺と有栖川父は書斎のソファで並んで座って昼食を食べた。
今日はコブサラダとガーリックシュリンプとナンの生地のピザだ。こんな時だけど、海老美味しいわ。
「なぁ、千尋ってどんな子供だったの?」
俺は海老を食べながら聞いた。
「千尋は大人しい子供だったよ。少し人見知りで、でも甘えっ子で優しい子だった」
俺とは間逆だなぁ。そう思っているのが分かったのかと有栖川父が俺を見て言った。
「君と同じように、優しい子だったよ」
微笑みながら俺の頭を優しく撫でた。
「千尋が……君が人を助けて事故にあった話は聞いている」
「あ~それね」
それに関してはうろ覚えで、ぶっちゃけちょっと情け無いって思ってる。
「カッコよく助けたって訳じゃないみたいだけどね」
「誰にでもできる事じゃない。立派だよ」
「いやぁ」
改めて言われると照れるぜ。目覚めて北条先生からその話を聞いた時は、可愛い女子大生と付き合う妄想してたしなぁ。
「私の事も……」
「え?」
「この状況に不満なのは分かっている。それでも、心の底からは拒んでいないね」
「……あ」
有栖川父が俺をそっと抱き寄せ、俺の頭に頬を摺り寄せる。
「ありがとう。もう少しだけ、私に付き合ってくれ。側にいてほしい。私は千尋がいなければ駄目なんだよ」
「……」
「お願いだ」
切ない響きで囁かれた。
こんなふうに乞われて、「いつまで」とか「日本には帰れる?」とか、もう聞けなくなった。
「しょーがないなぁ」
俺はちょっと戯けて言った。「ありがとう。千尋」と、有栖川父は俺をぎゅっと抱き締めた。
「ほら。飯食えないから、そろそろ離して」
「そうだね」
有栖川父は笑って、もう一度ぎゅっと抱きしめてから手を離した。
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